impressive pirate shipimpressive pirate ship / Torley

「黒船襲来。」

こう書いたとき、ひと昔前ならそれは「グラビア界の黒船」リア・ディゾンを指しただろう(たぶん)。

しかしいま女子サッカーの世界で「黒船」と言えば INAC神戸レオネッサになるはずだ。
これまでトップリーグでの優勝経験は無し。
それでも今年は超大型補強を実現させて、なでしこリーグを席巻する台風の目の座に躍り出た。

その黒船がチームにとっての開幕戦となった前節で、いきなり一昨シーズンのチャンピオン浦和レッズ・レディースに完勝。
そして続く第2戦目は昨シーズンの女王、日テレ・ベレーザと対戦。
シーズン序盤から2戦連続での大一番を迎えたのである。

「黒船」の実力が本物かどうか、INACはのっけからその真価を問われることとなった。

女子サッカー界に現れた「黒船」

優勝候補同士の対決であると同時に、ベレーザから INACに移籍した選手が多く「因縁の対決」にもなったこの試合は、女子サッカーファンから大きな注目を集める一戦となった。
ゲームは前半からガチンコ対決の様相を呈する。

INACはベレーザから移籍加入した澤穂希が、ボランチの位置から巧みな配給を見せてゲームメイク。
前節と同様、チーム全体としてのコンビネーションは発展途上の INACだったけれども、澤という稀代のゲームメーカーを起点にチャンスを創るシンプルな戦術でベレーザを攻略にかかる。

ベレーザはキャプテンになった岩清水梓と、昨年の U-17女子ワールドカップでも活躍した期待の 16歳、村松智子との新センターバックコンビで臨む今シーズン。
しかしこの試合では、経験の浅い村松の裏側を突かれてチャンスを創られる場面が目立った。

そして前半 42分、その中央の守りを崩されて、ベレーザは先制点を許してしまう。
こちらも今季ベレーザから INACに移籍した大野忍のスルーパスから川澄奈穂美が裏に抜け出して、鮮やかなループ気味のミドルでゴールゲット。

大野と川澄の新ホットライン、そして難易度の高いシュートを決めた川澄の技術によって、ついに INACが均衡を破った。

対するベレーザは、前半から得意の地上戦でのドリブル、スルーパスから INACディフェンス陣を脅かす。
そして追う立場となった後半は、更にその攻勢を強めた。

後半は特に永里亜紗乃のプレーが目を引く。
非常に精力的でアグレッシブな動きを見せていて、正直なところこれまでとは別人かのように気持ちの入ったプレーぶりのように感じた。

INACは逆に両サイドアタッカーの動きが鈍り、攻撃は前半に輪をかけて単調なものに。
しかしそれでもベレーザの最終ラインはその攻撃を捕まえきることができず、アタック陣はINACのディフェンスを崩しきることができない。

そして 81分、カウンターから再び大野→川澄とつなぎ、最後は川澄が押しこんで 2-0。
決定的な2点目を決めて、追いすがる女王・ベレーザを突き放しにかかる。

昨年より大幅に若返ったベレーザに更なる反撃の力は残っておらず、試合はこのままタイムアップ。
前節レッズ戦と同じスコアで「黒船」INACが結果を残し、優勝候補の2大ライバルを追い落とす、下馬評通りのスタートを切ったのである。

岩渕真奈の抱える課題

スコアは 2-0。
しかし両チームの実力差は紙一重だったと言っていい。
それでも INACが競り勝ったことは、やはり選手個々の持つ経験のなせる業だったように思った。

そしてこの直接対決での結果は、今季の優勝争いを大きく左右するだけの意味を持つだろう。

ちなみにベレーザの岩渕真奈は、この試合でもまずまずの動きを見せていた。
左サイドのポジションで先発し、何度かサイドを突破してチャンスメイク、あるいはカットインしてのスルーパスなどで好機を演出する。

ただ、この日はチームとしても個人としてもノーゴールに終わったことで、当然課題は残る。
そして僕個人としても今シーズン2試合を観戦したことで、岩渕真奈の抱える現在の課題がはっきりしてきたように思う。

僕が見る限り、岩渕は「走りの量、もしくは質」が充分ではない。
いや、ディフェンスの際などに頑張って走っているような場面は見受けられるのだけれども、例えば攻撃の際に、フリーのときに前方にスペースが空いているような場面、あるいは自身がボールを奪われた直後にそれを取り返しに行くべき場面など、「そこで走ってほしい!」と観ている側が思うような場面で、足が止まっているシーンが多いのだ。
もともと本人も走ることがあまり好きではないのは認めているけれども、現代サッカーにおいてはより豊富な運動量が求められるし、それがあれば岩渕ももっと多くのチャンスに絡めるようになるはずだ。

それでもベテラン選手などのようにスタミナに課題を持つ選手の場合は、効率的なポジショニングや、周りを上手く使うようなコーチングでそれをカバーするような場合もある。
ただ 18歳になったばかりの岩渕に、そこまでの戦術眼を求めるのは酷だろう。
また、スペースにどんどん走り込むよりは、足元でボールをもらってから技術で抜き去るプレーを好むタイプの選手がいることもまた事実だ。

僕はもし岩渕が走りの質や量の課題を克服できないのであれば、「女王様」になればいいんではないかと思っている(言葉の響きはちょっとアレですが)。

とにかくまずは自分にボールを集めさせて、そこからカットインしてシュート、スルーパス、ドリブル突破を狙う。
たとえ運動量が少なくても、ボールを持った後のプレーが桁違いであれば、その選手は世界で一流になれるだろう。
かつてのロナウジーニョや現在のクリスティアーノ・ロナウドは、そういったスタイルで世界ナンバーワンのプレイヤーにまで昇り詰めたのだ。

僕はいま、岩渕真奈が全てのプレーを上手くこなそうとし過ぎて行き詰まっているように感じる。
もし本当にそうであれば、もっとプレーを整理してみてもいいのかもしれない。

現代サッカーの流行のスタイルに符合しなくても、ストロングポイントが卓越していれば頂点に達することは可能なはずだ。
そして岩渕真奈は、それができるだけの才能を持っている。

いずれにしても今シーズンは岩渕にとって、一つの壁にチャレンジして、自分のスタイルを確立する足がかりとなるシーズンになるのではないだろうか。

そして僕は、彼女であればきっとその壁を乗り越えてくれるはずだと期待しているのだ。

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