日本代表、日韓戦の向こうに見えるその将来/国際親善試合@日本代表 0-2 韓国代表

「舌を巻く」とはこういう時に使うのだろうか。
この日、埼玉で行われたワールドカップへ向けての壮行試合、対韓国戦。
ここで対戦したライバルに、日本代表は手も足も出ないまま完敗を喫した。
そしてこの敗戦は単なる1敗ではなく、日本サッカー界が今後大きく軌道修正を迫られる、その契機となる1敗だったように僕には感じられたのである。

日本代表、韓国の前に喫した完敗劇

埼玉スタジアムに6万人の大観衆を集めて開催されたこの試合。
ワールドカップ前の国内最後のゲーム、そして宿命のライバル韓国との対戦ということで、会場は凄まじいほどの熱気に包まれていた。
その雰囲気にあてられ、試合は立ち上がりからハイテンションな攻防を見せる。
両軍が激しい当たりでハイプレッシャーを掛け合う展開。今年に入ってずっとパリっとしない試合が続いていた日本代表だったけれども、このゲームでは始めから並々ならぬ気合いが感じられた。
中澤佑二が「この試合は勝ちにこだわっていた」と試合後に語った通り、東アジア選手権とセルビア戦の惨敗のイメージを払拭するために、背水の陣で臨んでいたのだろう。
立ち上がりから、その気迫は確かに見て取れた。
しかし、そのテンションが続いたのはわずかな時間だけである。
試合開始からわずか6分で失点を喫すると、立ち上がりの日本のテンションは、明らかに低下したのが分かった。
その後の日本は、勢いを増す韓国の前に守勢に回る。
韓国の猛攻を何とか耐えしのいでいたものの、攻撃に回った際には韓国の激しいプレッシャーの前にまともにボールを回させてもらえない。
球際のぶつかり合いでことごとく競り負け、中村俊輔、遠藤保仁、本田圭佑らの自慢の攻撃陣も完全に封じ込められた。
後半、韓国の運動量が落ちると多少は攻撃の形を作れるようにはなったものの、決定機には繋がらない。
そうこうしているうちに試合終了間際にカウンターからPKを取られ、これを決められ万事休す。
最大のライバルチームに対し、絵に描いたような完敗劇である。

パク・チソンが見せつけた「世界基準」

日本の負け試合はもう慣れっこになってしまったので特に驚きはない。
「ああ、またか」という程度のものである。
それより僕が驚いたのは、韓国との実力差が数年前と比べて明らかに広がっていたことである。
韓国は文句なしに強かった。
国内では「史上最強チーム」と呼ばれているそうだけど、その看板に違わぬ強さである。
立ち上がりからフィジカルで日本を圧倒し、アウェーの埼スタで完全に主導権を握っていた。
欧州でプレーする選手が格段に増えたことも関係しているのだろう。以前と比べ、フィジカルはヨーロッパのチームと比べても遜色のないレベルにまで進化していたように見えた。さらに技術レベルも格段の進歩を見せている。明らかにスケールアップしている韓国の姿がそこにはあった。
そしてその急先鋒となっていたのが、パク・チソンである。
パクの挙げた1点目は圧巻だった。
こぼれ球にダッシュをかけてこれを拾うと、トップスピードのまま日本のゴールへ向けて突進。
DF陣のチェックを受けながらも全くバランスを崩さず、そのまま包囲網を突破し、その流れからゴール左隅へ強烈なミドルシュートを叩き込んだ。
まさに「ワールドクラス」としか言いようのないプレー。
このスーパーゴールに面食らった格好となった日本は、この後しばらく混乱の時間帯を迎えてしまう。
それくらいに想像をはるかに超えた、「超アジア級」のプレイヤーへと、パク・チソンは成長していたのである。
日本にも本田圭佑や長谷部誠などヨーロッパで活躍している選手はいるものの、パク・チソンは何と言ってもあの、泣く子も黙るマンチェスター・ユナイテッドのレギュラークラスである。他のヨーロッパ組の選手と比べても、格段に高い存在感をパクは放っていた。
この日のパクはゴールシーン以外でも大活躍だった。
マンUの中では、ともすれば「攻撃も守備もオールラウンドにこなせるけど、これといった特長の無い選手」のようにも見えてしまうパクだけれども、その認識が全く間違っていたことに僕は気がつかされた。
アジアレベルでのパク・チソンは「フィジカル、技術、メンタル、戦術眼、全てにおいて傑出した能力を持つプレーヤー」だったのだ。
どのプレーをやらせても、パクは日韓のほとんどの選手たちよりもグレードの高いプレーを披露していた。
韓国代表におけるパク・チソンは、まさにプレーでも精神面でもチームの象徴的存在である「キング」の風格に満ちていた。
その「本物」のプレーは日本を意気消沈させ、たった1つのゴールで試合の大勢を決してしまったのである。

日本と韓国、大きく開いたその実力差

対する日本のキーマンである中村、本田、遠藤らは、韓国のプレッシャーの前に全く攻撃の形を作らせてもらえらなかった。
何と言えばいいのか、彼らの技術は間違いなく高いのだけれども、圧倒的なフィジカルの差の前にはその技術も無力に等しいようにすら僕には思えた。そのくらいに、まず「個」の部分で、日本は韓国に圧倒されていたように感じられたのだ。
いつの間にか、韓国と日本との間には、これほどまでの個人能力の差がついてしまっていたのである。
ただし、兆候はあった。
遡ること2年前の、2008年に行われたアジアユース。この大会の準々決勝で、日本ユース代表は韓国ユース代表と対戦。 0-3 の完敗を喫し、7大会連続で出場していた U-20ワールドカップへの出場を逃していた。
永井謙佑や柿谷曜一朗らのタレントを擁したこの時の日本ユース代表だったものの、韓国のフィジカルと技術の前に、なすすべもなく敗れ去っていたのである。
この試合でも、テクニックでは日本も決してひけをとってはいなかった。しかし、韓国は技術に加えてフィジカルをも兼備していた。その韓国と比べ、技術一辺倒の日本はあまりにもひ弱だった。
このゲームでの日本の凄惨なまでの負けっぷりに、僕は近い将来、韓国に大きく差をつけられる日本サッカー界の未来の姿を見たようで、絶望的な気持ちになったものである。
それがとうとう現実になってきているようである。
ユース年代での日本と韓国の実力差を考えれば、この日の埼玉スタジアムで感じた差は今後さらに広がる可能性もあると見ていい。
この日の結果には、現時点でのチーム戦術の完成度や監督の指導力も確かに影響しているだろう。
しかし、本当の問題はもっと根深いところにあるのではないだろうか。
日本サッカー界は若年層の育成段階から、その方向性を抜本的に見直す時期に差し掛かっているのではないかと僕は思った。

日本代表、喧騒の中の旅立ち

試合後には、歓声とも怒声ともつかぬ嬌声がスタジアムで渦巻いているのが、テレビを通じても感じ取れた。
僕が先月、長居スタジアムでのセルビア戦で体験したのと同じような光景である。
まるで代表への期待と不安をそのまま形にしたような異様な雰囲気。それはさながらカオスの様相を呈していた。
この試合後には、岡田監督が犬飼会長に進退伺いをした、という報道が流れた。
2月のベネズエラ戦から続く混乱の渦中にある日本代表。
しかし泣いても笑っても、もうワールドカップは3週間後に迫っているのである。
どれほどの不安を抱えていようとも、もう日本は前に進むしかない。
再び繰り返された混乱と喧騒。
応援ムードとは全く異なる不穏な空気に後ろ髪を引かれながらも、日本代表はワールドカップへと旅立つ。

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