なでしこリーグの福音

突然ですが皆さんは、どのジャンルのサッカーがお好きでしょうか?

ひと口にサッカーファンと言っても色々な趣味趣向の人がいる。

サポートするJチームを熱烈に応援している人。
観るのは海外サッカーだけ、という人。
特定の選手を追いかけている人。
やるのは好きだけど観るのはあんまり、という人もいる。
もちろん、いくつかの楽しみ方を掛け持ちしている人も多いと思う。

ちなみに僕の場合はと言うと、完全な雑食系男子である。

サッカーを真剣に観るようになったのは93年のJリーグ開幕がきっかけだから、Jリーグは大好き。
日本代表はずっと心から応援し続けているし、海外の試合も毎週必ず観ている。
高校やユースのサッカーも好きだし、最近はフットサルもちょくちょく観るようになった。
とにかくサッカーに関するものであれば、何を観ていても楽しい。

そして、そんな僕のマイブームが、女子サッカーだ。

躍進する日本の女子サッカー

近年、日本の女子サッカーの進歩は目覚ましい。

2004年アテネ五輪で、強豪のスウェーデンを下して驚きのベスト8入り。
続く2008年北京五輪では、アテネを上回る4強入りという快挙を成し遂げた。

そして北京ではその結果以上に、おそらく世界で一番美しかった”なでしこジャパン”のサッカースタイルが、世界の女子サッカー界に大きな衝撃を与えたのである。

いま、日本の女子サッカーは、確実に上昇気流の中にある。

しかし当たり前ながら、女子は男子に比べて身体能力が低い。
当然、競技としてのレベルは男子サッカーにはかなわない。

それを理由に、女子サッカーに興味を持てないという人も多いだろう。
僕も昔はその一人だった。

けれども女子サッカーには、男子のサッカー界に失われつつあるものが、形を変えずに残っているように思う。

それは一言でいうなら「情熱」だ。

国内の女子サッカーをとりまく環境は、いまだ恵まれたものとは言い難い。
プロ契約の選手はわずかで、大半は仕事やアルバイトをしながらプレーを続けるアマチュア選手。
さらにはなでしこリーグの強豪だったTASAKIペルーレが2008年に休部となるなど、いつチームそのものが消滅してもおかしくないという不安を、常に抱えている。

もしオリンピックに出られなかったら、ワールドカップで勝てなかったら。

マイナースポーツである女子サッカーは、大げさでなく、その存続自体が脅かされる可能性がある。
そしてまた、選手たち自身も、サッカーを続けられなくなるかもしれないのだ。

そんな危機感を背負っているから、いつも彼女たちは必死なのである。

Jリーグが体験した「歴史の胎動」

そして逆に、なんやかんや言われながらもしっかりとJリーグが地域に根づき、ワールドカップも出場が当たり前になってきた今日の男子サッカーでは、女子ほどの情熱を感じることができなくなってしまっている。

だが男子サッカーにも、熱気と緊張感に満ちていた時代はあった。

Jリーグの創設当時である。

その頃、プロリーグが産声を上げたばかりの日本は、空前のサッカーブームに湧いていた。

長くアマチュアとして不遇の時代を経験してきた選手たちは、突如として超満員となったスタンドの熱気に後押しされながらも、「自分たちが良いプレーをしなければ、せっかく灯ったプロサッカーの火が消えてしまう」と、常にそんな危機感を抱きながらプレーをしていたように思う。

そのモチベーションは時代を動かし、93年のプロリーグ発足から98年のワールドカップ初出場、そして2002年の日韓ワールドカップ開催に至るまでの、熱狂の時代を形成していくのである。

僕はいま女子サッカーに、その頃と同じような歴史の胎動を感じる。

いまこそ女子に目を向ける時だ、そんな予感がするのである。

女子サッカー界に現れた「本物のスター」、岩渕真奈

ちなみに、僕の女子サッカーマイブームのきっかけがもう一つ。

先月、16歳でなでしこジャパンにデビューを飾り、ちょうど一週間前に17歳になったばかりの天才サッカー少女、岩渕真奈選手の存在である。
僕は彼女の大ファンなのだ。

岩渕真奈を初めて見たのは、北京五輪から間もない2008年の秋。

予備知識も無く、テレビで何気なく観た U-17女子ワールドカップ。
その大会で目にした、大柄な欧米のディフェンス陣を、鋭いドリブルでズタズタに切り裂く日本の10番のプレーに、僕は度肝を抜かれた。

日本の女子に、こんな物凄い選手が現れたのか。

いよいよ女子サッカー界にも、お客さんを呼べる本物のスター候補が出現した、と感じた。

そしてなでしこリーグで、そのプレーをふたたび目にしたいと思った。

「ネット中継」という福音

しかし、岩渕の所属するベレーザは東京をホームとしている。
そして関西には、なでしこリーグのチームは少ない。

大阪在住の僕には生観戦のハードルは高く、けっきょく去年は一度も彼女のプレーを見れずに終わった。

けれども今年こそは、しっかり観戦計画を立て、見に行ける試合には足を運ぼうと決めていた。
そんな矢先の朗報である。

『「なでしこリーグ」全試合、ネットで動画配信』

なんと今季のなでしこリーグが、ネット上で全試合観れるというではないか!
これは素晴らしい決定だ。

これまでは僕のように、「観たいけど観に行けない」人間は、なでしこリーグのゲームを観る手段が無かった。
それが一気に解決である。

岩渕人気に乗っかった感も見え隠れするものの、とにかく嬉しい限りだ。
今年はぜひ、ネット上でもなでしこリーグを楽しみたいと思う。

そしてサッカーファンの方々にも、これを機に、ぜひ女子サッカーに触れてみてもらえればと思う。

女子は確かにパワーがない。
キックも遠くには蹴れない。
ダボダボのユニフォームで色気もない。

しかし、彼女たちには情熱がある。

男子サッカーが忘れかけている大切なものを、そこでならきっと、眼にすることができるはずだ。

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