日本では代表チームが不甲斐ない戦いを繰り返し、批判にさらされている。
国内のファンの意見では、本大会でも苦戦するだろうとの見方が多数を占めているそうだ。僕も基本的にはそう思っているし、まあそれが一般的な見方だと思う。
しかし、それじゃあライバル国たちは順風満帆なのかと言うと、どうやらそうでもないらしい。
グループリーグ本命のオランダはテストマッチでも実力を見せつけているけども、デンマークはオーストラリアに敗れる失態を演じた。
そしてそれ以上に深刻なのが、カメルーン代表である。
繰り返される「内紛」のお家芸
アフリカのチームと言うと、大きな大会の前には「内紛」がお約束になっている。
理由の大半はボーナス絡みの協会とのトラブルで、日韓ワールドカップの際もカメルーン代表がこの理由で来日が遅れたのは記憶に新しい(ちなみにケガの高名というか、その影響でカメルーン代表のキャンプ地だった大分県中津江村が有名になったんだけども)。
今大会はボーナスとは違うけど、エースのサミュエル・エトーがトラブルの種を撒いている。
噛みついた相手は、90年イタリアワールドカップでカメルーンをアフリカ勢初のベスト8に導いた英雄、ロジェ・ミラだ。
ミラがエトーの代表でのプレーを批判したのが気に触ったらしく、エトーは「俺にとってはワールドカップは重要じゃない、参加辞退も考える」とブチまけたから、カメルーンのファンは「オイオイ!」となっただろう。
結局エトーはこの発言を撤回したものの、チームは英雄と現エースが一悶着おこしたことで余計な神経をすり減らす形になった。
ミラとしてみれば、「キャプテン翼・ワールドユース編」でリアルジャパン7の賀茂監督が「ポストプレーのできねえフォワードなんか、現代サッカーでは通用しねえんだ!」と日向小次郎を叱咤した時のような効果を狙っていたのだろうけど、エトーが想像を上回るほどの大人気ない対応をとってきたのは予想外だっただろう。
とりあえずエトーはキャプテン翼を読んでいないであろうことが判明したわけである。まあ、ミラも読んではいないだろうけど…。
隙だらけのカメルーン代表
その影響があったのかどうかは知らないけども、この試合でもカメルーンは良い出来とはほど遠かった。
対戦相手のポルトガルは、フェリペ・スコラーリ監督のもとベスト4に輝いた前回大会ほどの勝負強さは無くなったと言われるけども、現監督のカルロス・ケイロスもさすがマンチェスター・ユナイテッドでファーガソンの参謀役を務めていただけあって、組織的な洗練されたチームを作ってきた。
それに対してカメルーンは、組織的とはとても言えないようなお粗末さである。
まずDFラインが酷い。組織はバラバラで不安定、特に両サイドはザル守備で、ここから再三に渡ってチャンスを作られていた。
攻撃に関しても選手同士の連動性が薄く、パス回しが遅い。
頼みの綱は個人技になってくるけれども、エトー以外のアタック陣はそれほどずば抜けた能力を持っているようにも感じられなかった。
そのエトーも、ミラとの騒動の影響もあってか、明らかに動きが鈍い。しまいにはたった33分でイエロー2枚をもらい退場してしまうという散々な出来だった。
日本代表もいろいろ叩かれてはいるけれども、はっきり言ってカメルーンのほうが更に状態は悪いかもしれない。
守備は付け入る隙が十二分にありそうだし、攻撃も対処できないと言うほどの迫力は感じられなかった。
唯一、アーリークロスからウェボがヘディングで決めた得点シーンには、さすがの身体能力の高さを感じたものの、そこに気をつけてさえいれば、日本にも勝機は生まれるのではないだろうか。
始まっている前哨戦
日本人の僕たちはついつい、不甲斐ない試合をしているのが自国の代表チームだけだという錯覚を覚えてしまう時がある。
でも実際には、他国にもそれぞれ「あちらの事情」があるようだ。
カメルーンの現状は、決していい状態とは言えない。むしろ日本以上に問題は深刻かもしれない。
しかしそれでもカメルーンは、「日本は弱い」と考えているだろう。
これはある意味でビッグチャンスである。
もしカメルーンが初戦で油断の色を見せるようならば、日本にも付け入る隙は充分にあるように感じる。
ただ忘れてはいけないのは、カメルーン代表に冠されているニックネームである。
“不屈のライオン” 。
彼らは逆境でこそ、その真価を発揮する。
逆に日本が油断して初戦を迎えるようなことがあれば、ライオンの牙は容赦なく日本の喉元を噛み切るだろう。
両者ともに負けられないオープニングゲーム。
そこで主導権を握るのは日本なのか、それともカメルーンなのか。
その戦いは、もう始まっているのである。
[ 関連エントリー ]