Photo by rachaelvoorhees
それはさながら、「大きなシーソー」のようなゲームだった。
香川真司の大活躍が際立つ、今シーズンのブンデスリーガ。
ただし、その他の日本人選手たちも活躍を続けている。
そして今節は、ブンデスリーガでの先達である長谷部誠のVfLヴォルフスブルクと、今シーズンからブンデスに挑戦する内田篤人のシャルケ04との直接対決が組まれた。
その勝負は、試合の前半と後半とで大きなコントラストを描く、「シーソーゲーム」の様相を呈したのである。
主導権を握ったヴォルフスブルク
この試合が動いたのは、あっという間の出来事だった。
前半 11分、ヴォルフスブルクのコーナーキックから、グラフィッチが頭で決めて 1-0。
まずはホームのヴォルフスブルクが主導権を握る展開となる。
続く 33分には、今度は内田篤人の守るサイドから、ヴォルフスブルクのサイドバック、マルセル・シェーファーに突破を許してクロスを上げられてしまう。
これを中央でエディン・ジェコが合わせて 2-0。
ヴォルフスブルクの誇る強力2トップの活躍で、試合は一気にヴォルフスブルク優勢へと傾いた。
ここまでを見れば、試合は完全なヴォルフスブルクペース。
16位に低迷するシャルケからしてみれば、今シーズン何度も繰り返されてきた悪夢に、またここでも襲われるのかと思われた。
ところが直後の 39分、そんな流れを食い止める1点が生まれる。
中盤でボールを受けたラウル・ゴンザレスのスルーパスから、ジェフェルソン・ファルファンが右サイドを抜けだしてグラウンダーのクロス。
これをファーサイドに走りこんだエドゥが押しこんで、シャルケが 2-1と1点差に追いついたのである。
この貴重な一点を手土産に、シャルケは後半戦を迎えることになった。
ペースを引き戻したシャルケ04
後半も立ち上がりはヴォルフスブルクのペースだった。
しかしシャルケは、真綿で首を絞めるように、ジワジワと試合のペースを引き戻しにかかる。
57分にはファルファンの突破から「あとは無人のゴールに流しこむだけ」という決定機を迎えたものの、ここはクラース・ヤン・フンテラールが合わせられずにチャンスを逃す。
そんな流れの中、シャルケ監督のフェリックス・マガトは勝負に出た。
63分、この日に1得点を挙げていたエドゥを含む2人を一気に同時交替。
代わりにフラードとクリストフ・モリッツを投入する。
結果的に、この積極策が実ることになった。
この交代でリズムを増したシャルケは、試合のペースをぐっと引き寄せることに成功。
そして 75分、交代で入ったモリッツが打ったシュートのリフレクションを、この日は大ブレーキになりかかっていたフンテラールが押しこんで、とうとう 2-2の同点に追いついた。
さらに直後の 78分には、ヴォルフスブルクのアシュカン・デヤガが一発レッドで退場。
10人になって、ヴォルフスブルクのミッションは勝利よりもむしろ、「負けないこと」にシフトせざるを得ない展開となった。
それでも後半ロスタイムには、長谷部誠のフリーキックからチャンス生まれたけれども得点には至らず。
けっきょく 2-2のスコアで、このシーソーゲームはドローでフィニッシュすることになったのである。
2人の日本人選手、その課題
ところで日本人選手たち2人は、この試合でともに先発フル出場。
お互いに課題を抱えながらも、全体的には好プレーを披露していたように思う。
内田篤人は相変わらず失点に絡んでしまったけれども、それ以外のシーンでは非常に良い出来だったと感じた。
得意の攻撃面では、効果的なオーバーラップからのクロスで、何度もチャンスを演出。
特に同じサイドのファルファンとのコンビは成熟を見せてきている。
そして守備面では、明らかに以前よりも、1対1での力強さが増してきているように思った。
女子サッカーの日本代表、永里優季選手も昨シーズン途中からドイツでプレーをしているけれども、永里いわくドイツでは、「ツヴァイ・カンプ(1対1)」という言葉が非常に重視されているそうだ。
日本ではまず「組織・組織」。
攻撃ではパスを繋いでのポゼッション、守備では DFラインの連携を重視するような傾向があるけれども、ドイツはまず「1対1で勝てなきゃ、話にならない」というわけである。
そしてそんな環境下でプレーすることによって、内田篤人のプレーにも逞しさが身についてきているように思える。
課題はまだまだ多いながらも、内田は着実に成長を遂げてきているのではないだろうか。
対する長谷部誠は、この日も攻守に安定したプレー。
中盤のつなぎも的確で、そつのない安心して見ていられるプレーが印象的だった。
ただ個人的要望を言ってしまえば、もう少しアクの強いプレーも見たいような気もする。
長谷部は良くも悪くも無難なプレーといった感じで、攻守ともに決定的な場面に絡むシーンは、あまり多くは見られなかった。
このへんのインパクトの弱さが、長谷部がここ数試合スタメンを外されていた要因でもあるのではないだろうか。
さらなる成長という意味では、もう一回りスケールの大きいプレーを期待したい気もする。
ともかく、2-0から 2-2というシーソーゲームで完結した今回の日本人対決。
シーズン後半戦での対戦では、2人はどれだけ成長した姿を、僕たちに見せてくれるのだろうか。
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