Photo by J-Cornelius
内田篤人の右足から放たれた弾道が、鮮やかな放物線を描く。
そのボールは DFラインの裏側と GKの間を見事にすり抜け、ファーサイドで待つクラース・ヤン・フンテラールの足元にピタリと落ちた。
オランダ代表の点取り屋はこれを落ち着いて決めて、3-0。
ドイツに移籍してからの初アシスト。
内田篤人の誇る攻撃力が、ドイツの地で初めて実った瞬間だった。
シャルケの演じたワンサイドゲーム
先週のミッドウィークに行なわれた UEFAチャンピオンズリーグ、グループリーグ第5節。
ブンデスリーガでは不振にあえぐシャルケ04も、このチャンピオンズリーグではグループ2位という好位置につけていた。
そして対戦相手は、1位を走るオリンピック・リヨン。
この試合を 3-0と快勝したシャルケは、見事にグループ1位に浮上。
同時に、決勝トーナメント進出を確定したのである。
この試合、序盤からシャルケはリヨンを圧倒していた。
先制ゴールが生まれたのは開始早々の 13分。
ラウル・ゴンサレスが DFラインの裏に飛び出して潰されたところ、そのこぼれをジェフェルソン・ファルファンが決めて 1-0。
続く 20分には、ショートカウンターからフンテラールが決めて、早い時間帯にシャルケがリヨンを突き放した。
逆に昨シーズンのチャンピオンズリーグでベスト4に入ったリヨンは、その実績が全く感じられないような不甲斐ない戦いぶりに終始する。
リヨンは昨シーズンの準決勝バイエルン戦でも全くピリっとしない戦いぶりで、あっさりと決勝進出を逃していたけども、今回もいったいドウシチャッタノ?という内容である。
まさかドイツ遠征をすると、ビールの飲み過ぎで二日酔いになる習性でもあるのだろうか。
リヨンの MFミシェウ・バストスは「試合の前半が酷すぎた。いったい何が起こったのか…。」と語っていたそうだけれども、「それはこっちのセリフじゃ」とサポーターたちがツッコミを入れた光景も想像に難くない。
しかし対するシャルケも、この試合は快勝したけれども、その後の週末に行なわれたブンデスリーガでは 0-5で大敗するなど、相変わらず戦いぶりは不安定だ。
結局のところ、両チームの好調・不調のバイオリズムが、シャルケにとっては都合よく噛み合ったのがこのチャンピオンズリーグの試合だったと言えるのではないだろうか。
日出づる国の『ライジング・クロス』
しかしその中でも内田篤人が、ダメ押しとなる3点目をアシストしたことは、僕たち日本人にとっては嬉しいニュースだった。
もっとも内田のプレー自体は、これまでも試合をこなすごとに向上を見せていた。
右サイドでコンビを組むファルファンとの連携は日増しに成熟していたし、好クロスを上げてラウルやフンテラールから「今の良かったぜ」と親指を立てられるシーンも1度や2度ではなかった。
チーム内でも内田の攻撃力は、既に認められつつあったと言えるのではないだろうか。
その内田篤人がいよいよ、目に見える結果を出したのだ。
チーム自体は、好不調の波が激しい状態がずっと続いている。
しかしそんな荒波の中でも、内田自身から見える視界は、日ごとに見通しの良いものになろうとしている。
内田にとってこの初アシストは、さらなる浮上のきっかけを掴むための『ライジング・クロス』になるのだろうか。
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