人類の起源はアフリカ大陸なんだそうである。

僕らの爺さんの爺さんの爺さんのそのまた爺さんがアフリカに住んでいた時にどんな姿だったのかは想像もつかないけれども、アフリカの選手たちからは確かに、人間が根源的に持っていた「野生の息吹」を感じる。あるいは同様に「大地の鼓動」なんて具合に表現されたりもする。

そのアフリカ大陸で、初となるワールドカップが開幕した。
まさに歴史的な1ページが開かれた瞬間だと言っていいだろう。

8年前にワールドカップを実体験している僕たち日本人は、いま南アフリカで何が起こっているのかあらかた想像がつく。
あの熱狂の日々がいま、南アフリカに訪れているのである。
アフリカの人々の感動はひとしおだろう。

そして僕たちアフリカ以外のサッカーファンにとっても、待ちに待った4年ぶりのワールドカップである。

僕個人としては、初観戦した 1994年アメリカ大会以降5回目のワールドカップ。
あれから 16歳年をとったけど、ワールドカップを迎える感動は不思議なほど色褪せない。

サッカー馬鹿が、「生きててよかった」と一番痛感できる1ヶ月がやって来た。

そしてこの開幕戦には、開催国の南アフリカ代表が登場した。
しかしこのゲームでまず主役の座に躍り出たのは、開催国の影に隠れがちだった対戦相手、メキシコ代表である。

「黄金世代」が変革するメキシコサッカー

近年のメキシコを語る上で、2005年の U-17ワールドカップを忘れるわけにはいかないだろう。

それまでも中米ではナンバーワンの地位を確立していたメキシコだけれども、世界的にはメジャータイトルとは無縁の中堅国だった。
しかしこの U-17では、国内で「黄金世代」と呼ばれるほどのタレントが揃い、見事にメキシコサッカー史上初の世界タイトルを獲得する。

そしてこの大会でメキシコの中核を担ったのが、大会得点王に輝いたカルロス・ベラと、シルバーボール賞を獲得したエース、ジョバニ・ドス・サントスである。

あれから5年が経ち、2人はA代表でもレギューラとなる選手へと成長を遂げた。

これまでのメキシコ代表といえば、小柄だけど当たりに強く、運動量が豊富。メンタルが強くてファイティングスピリッツがある。ラテン系の国らしく、全体としてテクニックレベルも高い。しかし突出したスキルを持つ天才的なプレーヤーは少ない、というようなイメージがあった。
そのスタイルは日本もお手本にすべき、とよく言われていたけれども、日本と同様に決め手に欠ける印象も強かった。

20年前にはレアル・マドリードで5度の得点王に輝いた「英雄」ウーゴ・サンチェスのような選手もいたけれども、その後は比較的小ぶりなタレントばかりを輩出してきたイメージである。

しかし05年組の「黄金世代」たちが、そんなメキシコのサッカーを変えようとしている。

この試合でもドスサントスとベラの2人は、立ち上がりから傑出した才能を見せつけた。

ドリブルにパスに創造性豊かなプレーを連発し、これまでのメキシコに足りていなかった「ファンタジー」を注入していたように思えた。

特にドスサントスは衝撃的である。
いったんドリブルを始めれば、スキーのスラロームのような流麗な軌道は南アフリカDF陣を翻弄し、また少しでもスペースを見つければそこにキラーパスを送り込む。

前半開始早々から、このドスサントスとベラ、そして右サイドバックに入ったパウル・アギラルらが次々とチャンスを作り出し、そこに従来通りのパスワークを絡ませ、序盤はメキシコが完全に開催国を圧倒する展開となった。

しかしメキシコは、その大いなる可能性と同時に若さも露呈してしまう。
何度も決定的チャンスを作りながらも、南アフリカのGK イトゥメレング・クーンのスーパーセーブもあって、ゴールを割ることはできない。
結局 0-0 のまま前半は終了。

そして「サッカーの神様」はいつものシナリオ通り、チャンスの後には彼らに試練を与えたのである。

南アフリカに舞い降りた「サッカーの神様」

後半になると、堅さの取れた南アフリカも徐々に反撃に転じるようになる。

ちなみに現在のFIFAランキングで言うと、メキシコの 17位に対して、南アフリカは 83位。
実際のゲームを見ても、サッカーの完成度という意味では、メキシコのほうが1枚も2枚も上手だったと思う。
南アフリカも時おり流れるようなパスワークからチャンスを作ることがあったものの、やはり実力差は大きく、全体としては守勢に回る場面も多かった。

しかし、この大会にかける南アフリカのファイティングスピリッツは、テレビ顔面を通じてもひしひしと伝わってきた。

そしてその思いが、後半 55分に結実する。

自陣でボールを奪った南アフリカがカウンターを仕掛け、ゲームメーカーのテコ・モディセから、左のオープンスペースに走り込んだシフィウェ・チャバララにスルーパスが通る。
そしてチャバララの左足から放たれたミドルシュートは、弾丸のような軌道を描いて、ゴール右上隅の「神のコース」へと突き刺さったのだ。

狂喜乱舞する南アフリカサポーターとイレブン。
形勢を一気に逆転するこのスーパーゴールは、まさに「アフリカ大陸初のワールドカップ」のオープニングを飾るにふさわしい衝撃的な一発だった。

下馬評では不利と見られていた南アフリカに、突如降ってわいた「勝利」の可能性。

しかし、そんなシンデレラストーリーを容易には許さないのも、「ツンデレ」が得意のサッカーの神様の習性なのである。

始まった1ヶ月間の熱闘

先制点で勢いづいた南アフリカを「いなした」のは、ワールドカップの常連国メキシコの「経験」だった。
浮き足立ったムードから徐々に流れを取り戻すと、79分、コーナーキックからのラファエル・マルケスの得点で、あっさりと同点に追いつく。

追いつかれた南アフリカは、再び勝利を目指してメシキコゴールに襲いかかった。
しかし、何度か決定的チャンスを迎えるものの決めきれず、結局試合はそのままタイムアップ。
歴史的な開幕戦は、1-1のドローで終わった。

先制点を決めヒーローとなったチャバララの、試合後の呆然とした表情が印象的だった。

南アフリカとしては、一度は掴みかけた歴史的一勝がその手からこぼれ落ちたのだから、落胆は大きかっただろう。
しかし、勝てる試合を逃したという意味では、メキシコにとっても同様である。

両者にとって悔いの残るゲームとなったかもしれないけれども、グループAは混戦が予想される。
ここで両チームが得た勝ち点1は、数日後にはそれなりに大きな意味を持ってくるだろう。

何はともあれ、1ヶ月間・64試合に渡る大会の、はじめの一歩が刻まれたわけである。

アフリカ大陸から生まれた人類は、サッカーという「お土産」を持って、再びアフリカに帰ってきた。

里帰りの手土産としては文句なしに面白かったこの開幕戦。
南アフリカの健闘は「波乱の大会」の展開も予感させる。

もともとサッカー馬鹿の僕だけども、決勝戦が終わるまでは、更にとことん馬鹿になってやろうと思っている。

だって4年に1回だけそれが許される1ヶ月が、とうとうやって来たんだから!

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