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今から 10年前の 2001年。
U-17ワールドカップ(当時の名称は U-17世界選手権)がカリブ海の島国、トリニダード・トバゴで開催された。

日本からも阿部祐大朗、茂木弘人、藤本淳吾、成岡翔、菊地直哉たちを中心とした代表チームがこの大会に参加したけれども、大きなインパクトを残すこと無くグループリーグ敗退を喫する。
特に同じグループを戦った強豪2チーム…最終的に、どちらもこの大会のファイナリストとなるナイジェリアとフランスにはそれぞれ 0-4、1-5の大差で敗れ、当時の世界レベルとの差を痛感させられることになった。

しかしそれだけに、この大会で感じた世界のレベルの高さは当時の僕にとっては鮮烈なもので、特にこの大会で優勝したフランス代表のサッカーに受けた衝撃は、今でも鮮烈な印象として残っている。

この時のフランス U-17代表は、フローラン・シナマ=ポンゴル(現サラゴサ)とアントニー・ルタレック(現オセール)の破壊的な2トップを軸に、当時世界最強の名を欲しいままにしていたA代表ばりの超攻撃サッカーを披露し、決勝戦ではグループリーグで日本を粉砕したナイジェリアを 3-0と一蹴。

その強く華麗なシャンパン・サッカーは、まさに「衝撃的」と形容するにふさわしいものだった。

そしてその後の 2007年大会でも再び相対した日本とフランスは(この時は 1-2でフランスが勝利)、今年 2011年、同じ U-17ワールドカップの舞台で三たび対峙することになった。

ただしそのゲーム内容は、日本が大敗を喫した 10年前の対戦とは全く違った絵を、ピッチの上に描くこととなったのである。

フランス U-17の過去と現在

フランスはかつては世界有数の「育成大国」として名を馳せた国だ。

アーセン・ヴェンゲルなどの優秀な指導者を多数輩出するとともに、世界に先駆けて国立のユースアカデミー『クレールフォンテーヌ国立研究所』を設立。
ここからティエリ・アンリやニコラ・アネルカなどのワールドクラスの選手を育てたことが、後の1998年ワールドカップと ユーロ2000の優勝に繋がった。
またこのクレールフォンテーヌを参考に、日本の JFAアカデミーが創設されたことも有名な話である。

2001年の U-17優勝も、まさにそんなフランスの「育成力」の成果が発揮された一例だったのだ。

しかしあれから 10年、現在の U-17フランス代表を目の当たりにして、僕は 10年前とはまた違った意味での衝撃を受けた。
なぜかと言えばメキシコに乗り込んできた U-17フランス代表は、以前とは打って変わって、モダンさのカケラも無いような凡庸なチームに成り下がってしまっていたのだ。
それはまるで、高校時代の憧れだったあの娘が 10年後の同窓会では疲れた OLになっていた時のような………あるいは部活のスターだった先輩が、10年後にビデオ屋の店員になっている姿を目撃した時のような………例えがよく分からないけど、とにかくそれなりに凄い衝撃だったのだと思っていただきたい。

現在の U-17フランス代表は、良くも悪くも “シャンパン・サッカー” の香りの感じられない「フィジカル重視」のチームになっていた。
180cm超〜190cmクラスの選手たちをズラリと揃え、スタメンのうち7割〜8割を黒人系の選手で固めたフランスは、「U-17」という大会規定を少なくともルックスの上では完全に無視したかのようなイカツさで、飲み屋で隣の席には絶対に座りたくないような集団である。

ただしその反面、テクニックは従来の代表チームに比べると凡庸。
さらに組織力では足元にも及ばないような、非常に古典的なチームへと回帰してしまっていた。

これに対して日本の現在の U-17代表は、おそらく日本のこのカテゴリーの歴史上でも最も洗練されたチームの1つである。

この日、吉武博文監督は緒戦のジャマイカ戦からスタメン4人を入れ替えて、ジャマイカ戦の後半から投入されて存在感を見せた鈴木武蔵を先発で起用してきた。

そして日本はゲームの序盤、そのモダン・サッカーでフランスを圧倒することになる。

日本の見せた善戦

突出した選手はいないものの、糸を紡ぐようなパスワークで中盤を制圧する日本。
フランスの実力をもっと高いところに予想していた僕にとってはちょっとした驚きだったのだけれども、しかしフランスも緒戦でアルゼンチンを 3-0で破ったチーム。
勝負強さという意味では、やはりあなどれないポテンシャルを備えていた。

フランスは序盤からディフェンスラインを低めにキープして、日本にボールを「回させる」戦術をとってくる。
しかし自陣には屈強な選手たちによる中盤と最終ラインの2枚のブロックをしっかりと固め、バイタルエリア以降で日本に自由を与えることは無い。

センターフォワードの位置で先発した日本のキーマン・鈴木武蔵も中央のキツいマークに苦しむと、得意の左サイドへと逃げるようなポジショニングをとるようになってしまう。
結果的に日本の前線は中央に誰もいないような状態が続き、ボールは回せどもチャンスは創れない、という本末転倒なアリ地獄に陥ってしまった。

そんな中、カウンターからチャンスを狙い続けたフランスが、日本の一瞬の隙を突く。

24分、ショートカウンターからフランスがボールを繋ぐと、最後は 10番のアブダラ・イャイジェンが巧みなミドルシュートを決めて 0-1。
中盤でのポゼッションを重視した日本に対して、よりシンプルにゴールを目指したフランスの攻撃が上回り、日本は先制を許してしまった。

後半に入ると日本は、昨年の AFC U-16選手権で大活躍したエースストライカー、南野拓実を今大会で初めて投入する。

生粋の「リアルストライカー」南野の投入で前線の中央に軸のできた日本は、前半よりはよりゴールに近い位置でのチャンスを創ることができるようになっていった。
そしてそれは、後半早々の 49分にいきなり成果を見せる。

日本の石毛秀樹がペナルティーエリア左で仕掛けたドリブルを倒されると、主審のホイッスルが鳴った。
微妙な判定だったものの、ややラッキーな形で日本が PKを獲得。
これを石毛本人がキッチリと決めて、日本が 1-1の同点に追いついたのだ。

その後は両チームとも何度かの決定機を生み出すものの、フィニッシュの精度を欠いて追加点はならず。
もっとも、ともに緒戦を勝っていてこの2戦目は「引き分けでもいい」状態の両チームがリスクを負った攻めを見せることは稀で、チャンスのシーンでもそれほど得点の匂いがしなかったことも事実だった。

けっきょく試合は 1-1のままドローで終了。

日本とフランスがともに決勝トーナメント進出へと一歩ずつ前進する、ある意味では「想定どおり」の結果を手にしたのである。

「想定どおり」の価値あるドロー

2001年大会では4点差をつけられて玉砕。
2007年大会でも柿谷曜一朗の 50mスーパーゴールが決まりながらも力負けしたフランスという相手。
それだけに今回も僕は苦戦を予想していたのだけれども、蓋を開けてみればむしろ、ポゼッションでは日本が上回るような形での引き分けに終わった。

結果だけを見れば、日本は進化していると判断していいだろう。
しかし実際の試合を観ると、諸手を挙げて喜べるような内容ではなかったようにも感じる。

まずフランスはこれまでのフランスではなかった。
そしてそのフランスに対してすらも、日本は必ずしも試合の主導権を握っていたとは言い難い。
むしろ、どこかまだ余裕を残していたフランスを相手に、PKで何とか同点に持ち込んだ試合、というのが僕の受けた印象だ。

そういった意味では歯切れの悪さが残る、判断の難しいゲームだったとも言えるだろう。

ただし、アルゼンチンを 3-0で一蹴したフランスが弱いわけはなく、そのチームに対して引き分けたことはもちろん一定の評価を受けていい。
さらに、良くても「善戦」で力尽きていた先輩たちが残せなかった「勝ち点1」という成果を挙げたことは、この試合に対する評価以上に貴重なものとなるだろう。

そしてその結果から手にしたであろう「自信」も、選手たちにとっては大きな収穫になったのではないだろうか。

強豪相手に手に入れた「想定どおり」の成果の数々。

何よりもこの一戦が日本代表に「決勝トーナメント進出」への扉を大きく開かせたことは、紛れもない事実だったのである。

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