香川真司の刻んだ、確かな足跡/ブンデスリーガ@ボルシア・ドルトムント 0-2 バイヤー・レバークーゼン

香川真司がサッカーの虜になったのは、2歳の頃なんだそうである。

その日以来彼は、休む事なく毎日、サッカーボールを追い続けた。
だから香川真司は、現在 21歳の若さながら、既に 20年近くのキャリアを持っていることになる。

そんな香川の好きな言葉は、おおよそ若者らしくはない「努力」だ。
サッカー選手として大成していなかったら逆に心配されてしまいかねないくらい、年輪を感じさせるストイックなフレーズである。

そう、香川真司はサッカーの天才ではないけれど、稀代の「努力の天才」なのだ。

香川真司、その順風満帆のサッカー人生

兵庫県出身の香川真司が技を磨いたのは、宮城県は仙台にあるクラブチーム、FCみやぎバルセロナだった。

セレッソ大阪で香川の大先輩だった森島寛晃もそうだったように、地元を離れて遠方の強豪チームにサッカー留学をする選手は、昔からそう珍しいものではない。

ただし、大抵それは高校時代からである。
その点、香川が仙台に渡ったのは、中学生に上がる時だった。
それだけ香川真司は、目標をはっきりと持った成熟した少年だったのだと言えるだろう。

その後セレッソ大阪のスカウトの目に留まり、高校2年生にして関西に戻りプロ契約。
18歳でレギュラーを確保すると、U-20ワールドカップと北京オリンピックには飛び級で選出される。

そして20歳でJ2の得点王に。
さらに今シーズン、21歳で海外挑戦のチャンスを得た。

まさに順風満帆のサッカー人生。
その香川真司がこの日、いよいよブンデスリーガの檜舞台に立ったのである。

ドルトムントの街に轟いた、「香川真司」の名

香川が今シーズンから移籍したボルシア・ドルトムントは、観客動員数世界一を誇るブンデスリーガの中でもナンバーワンの観客動員力を持つ、超が3つ付くほどの人気クラブだ。

しかし香川真司の名前は、そのドルトムントの街で既に知れ渡っていた。

8月の上旬に行われた、プレシーズンマッチのマンチェスター・シティー戦。
このイングランドの強豪相手に香川は、見事に1ゴールを決めて存在感を示す。

さらに2週間後のヨーロッパリーグプレーオフ。
ここでもアゼルバイジャンのカラバグを相手に、公式戦初ゴールを含む2ゴールと大活躍。

この2試合で香川真司の名前は、一躍ドルトムントの人々の脳裏に記憶されることとなった。

わずか1ヶ月前には全くの無名選手だった香川真司は、今やドルトムントで最も注目を集める助っ人として、開幕戦を迎えることとなったのである。

開幕の相手は昨シーズン4位の強豪、バイヤー・レバークーゼンだった。

昨年5位のドルトムントはしかし、このライバルを相手に立ち上がりからゲームを支配されてしまう。
組織的なパスワークで、ドルトムントを翻弄するレバークーゼン。

しかしその中でも、レバークーゼンをヒヤリとさせた選手がいた。

前半9分、ゴール前でボールを受けた香川真司は、トリッキーなトラップ1発で DFラインの裏をとり、GKと1対1に。

キーパーの頭上を狙ったループシュートは惜しくもセーブされたものの、そのスピードとアイディアをホームの大観衆に見せつけた。
まさに名刺がわりのワンプレー。

その後2点を奪われたドルトムントは完敗を喫したのだけれども、香川のプレーは、劣勢のチームの中で貴重なアクセントになっていた。

香川真司の刻もうとしている、大きな足跡。

香川真司は 21歳にして海を渡り、世界の舞台にその名を刻もうとしている。

この年齢は中田英寿、小野伸二、稲本潤一、本田圭佑らの偉大な先輩たちが、海外へと挑戦した歳と同じである。

ただし香川真司は、決して小野のような天才プレーヤーではない。
セレッソでゴールデンコンビを組んだ同い年の乾貴士と比べても、ボールテクニックの華麗さや、生まれついたサッカーセンスでは確実に劣るだろう。

しかし、そんな香川も正確な技術と運動量、そして得点力を武器に、人並み外れたペースでここまで成り上がってきた。

それを支えているのは、彼が 20年間絶やさず積み上げてきた「努力」に他ならないのではないか。

そしてその積み重ねが、今度はドイツの地で大きな果実を実らせようとしている。

ワールドカップも終わり、今シーズンは長友佑都、内田篤人、川島永嗣らの多くの日本人選手たちが海外へと挑戦の場を移した。

しかしその中でも、ひときわ大きな成功を期待されるのが香川真司である。

173センチと世界的には小柄な香川が、金髪の大男たちをドリブルでキリキリ舞いさせていく。
そんな痛快なシーンを、今シーズンは何度観ることができるのだろうか。

そして年間を通じて、そんなプレーが数多く見られたとしたら。

その時そこには、香川真司という若きフットボーラの、大きな足跡が刻まれているはずである。

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