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ルール地方はドイツの西部に位置する工業地帯だ。

元々は炭鉱の町として知られ、現在でもドイツ屈指の工業の街として、多くの労働者を抱える地域でもある。

そしてこの地方で働く労働者たちは一様に「熱い」。
大都会に比べれば娯楽が少ないこともあってか、この地域のフットボール熱には半端でないものがある。

ドイツはもともとフットボールの人気が非常に高い国で、ブンデスリーガ1部リーグの1試合平均観客動員数は 40,000人に迫る勢いを見せている。
これは世界のフットボールリーグの中で、堂々のナンバーワンであることは有名だ。

そしてそんなドイツの中でもとりわけフットボール熱が高い地域がルール地方であり、そのルール地方を代表するフットボールチームが、ボルシア・ドルトムントとシャルケ04の2チームになる。

ボルシア・ドルトムントの平均観客動員数は、実に1試合あたり 75,000人にものぼる。
これはフットボール熱の高いドイツの中でもナンバーワンの数字で、ヨーロッパ全体でもレアル・マドリードやマンチェスター・ユナイテッドに次ぐ第3位の数となる。

日本で圧倒的な人気を誇る浦和レッズの平均観客動員数が 45,000人前後だけども、実にその 1.6倍の数字となるわけだから、これはもう物凄い数だ。

そんなように、ドイツという国を代表する超人気チームが、ボルシア・ドルトムントなのである。

対するシャルケ04も、ドルトムントに引けを取らない人気を誇っている。
近年の平均観客動員数は毎年 60,000人を超え、国内ではボルシア・ドルトムント、バイエルン・ミュンヘンに次ぐ第3位の座が定位置となっている。

そしてドイツを代表する超人気チーム同士だけに、このボルシア・ドルトムントとシャルケ04は、ルール地方でも最大のライバルとみなされている。
この両チームが激突する「ルール・ダービー」は、ドイツ国内で最大のダービーマッチとして国中からの注目を集める、「伝統の一戦」として知られているのだ。

そして、そんなビッグマッチが、この週末に行われた。

そこで主役となったのは、なんと1人の小さな日本人選手だったのである。

香川真司の体験する「ルール・ダービー」

香川真司はボルシア・ドルトムントに入団した直後、チームメイトにこう忠告されたそうだ。

「お前の履いている青い(シャルケカラーの)スパイクは、ここでは履けないぞ」。

そして同じように釘を刺された。

「シャルケに入団した日本人(内田篤人)とは喋るなよ」。

日本国内では2人の「日本人対決」として注目されたこの一戦は、内田篤人の負傷による欠場で、その実現は見送られることになった。

しかし本来このカードには、そんな日本人観光客向けの謳い文句などは必要ない。

なぜなら国内最大のライバル対決は、常に激戦が予想される最高のカードだからである。
日本からの注目度は下がっても、ドイツでは国中の熱視線がシャルケのホームスタジアム、ゲルゼンキルヒェンのヴェルティンス・アレナに注がれていた。

ところが、多くのドイツ人が全く予想しないことが、この日のルール・ダービーには待ち受けていた。

それはこの試合で最も輝いたのが、ドルトムントの日本人、香川真司だったことである。

今季からボルシア・ドルトムントに加入した香川真司は、開幕からここまでの3試合は絶好調。
キレのあるプレーを連発し、前節にはとうとうブンデスリーガ初ゴールもゲットする

ただし、このミッドウィークに行われたヨーロッパリーグの試合では精彩を欠き途中交代。
代表戦も含めて連戦続きで、そろそろ疲れの見えてくる時期かと思われた。

ところが、迎えたこのルール・ダービーで香川は、今シーズン最高の大活躍を見せる。

立ち上がりからアウェーのドルトムントは、攻めに攻めた。

まるでどちらがホームチームだか分からないような一方的な試合展開で、ドルトムントはシャルケを圧倒する。
その流れから、ドルトムントにゴールが生まれるのは時間の問題だった。

しかし、その得点者の名前が、ドイツ全土に驚きを与えることになる。

前半 20分、中盤でルーズボールを拾うやいなや、ゴールに向かってドリブルを仕掛けたのは香川真司だった。

香川は一心不乱に、ゴールを目指して突進する。

その視界には、四角いゴールマウスの姿が克明に捉えられているようだった。

そしてペナルティエリアライン付近、香川の左足から放たれたシュートは絶妙なコースを突いて、ゴールの枠を捉える。

そのボールは、ワールドカップでも活躍したドイツ代表の守護神、マヌエル・ノイアーの指先をかすめ、ゴール左隅に吸い込まれたのである。

アウェーに足を運んだドルトムントサポーターの、怒号のような歓声が響き渡る。

香川はこれで2試合連続得点。

ドイツでのその存在感を、さらに確固なものとする一撃だった。

しかし、日本からやってきた超特急はこれだけでは止まらなかった。

このあと香川真司は、ルール・ダービー史上に残る決定的な仕事をやってのけることになる。

歴史に名を刻んだ香川真司

この日の香川は、得点シーン以外でもキレキレだった。

得意のドリブル突破を見せたかと思えば、浮き球を駆使したパスなどでも味方の決定機を演出。

セレッソ大阪では3シャドーのサイドアタッカーの位置から得点を量産した香川だったけれども、ドルトムントでは同じ3シャドーでも真ん中の位置で起用されている。

「香川が唯一苦手な、クロスの精度の部分があまり影響しないように」

というユルゲン・クロップ監督の配慮によって務めることになったトップ下のポジション。
結果的にこれがハマった。
このポジションで香川真司は、水を得た魚のように躍動することになる。

自らのドリブルで、シュートで。
あるいは味方を使って。

香川は攻撃のタクトを握るキーマンとして、ここまでの試合でもゴールに直結するビッグプレーを連発していた。

そして迎えた 58分、右サイドからのフワリとしたクロスボールがゴール前に供給される。

シャルケ GKノイアーの眼前を横切り、ファーサイドに流れていくボール。

ここに走りこんでいたのが、香川真司だった。

マークに付く相手 DFより一瞬早い動き出して、体半分ラインの裏に抜け出した香川真司。
その足元に、クロスボールがピタリと合う。

香川はこれを左足の足裏で合わせるように押し込み、この日2点目となる見事なゴールをゲットしたのである。

何とルール・ダービーで2得点。
ドイツ中の注目を集めるこの試合で、香川真司が文句なしの主役に躍り出た瞬間だった。

その2発の価値は、香川の才能を見ぬいたクロップ監督のこの言葉に集約されるだろう。

「これでシンジは、ドルトムントの街で忘れられることのない存在になった」。

けっきょく香川はこの日、74分までプレー。

試合は 1-3で、アウェーのドルトムントが快勝したのである。

日本から来た激安回転寿司

僕は前節の記事で、香川真司が近い将来、高原直泰の持つシーズン 11得点の日本人記録を塗り替えるだろうと予想したけれども、それは想像以上に早く実現するかもしれない。

これで香川はシーズン4試合目で、はやくも3得点。

わずか35万ユーロ(約4000万円)の移籍金で獲得した香川真司の大活躍を、地元紙は「クロップ監督が大阪の激安寿司を自慢」との見出しで報道した。

「安くてうまい」。

香川は 100円回転寿司ばりの輝きを放って、早くもドルトムントの人たちに愛される存在となった。

海外リーグでその名を刻む日本人。
まさにイチローさんならぬスシローさんである。

ただしシーズンが終わる頃には、香川真司はもうスシローさんではなくなっているだろう。
その市場価格は、35万ユーロなどではとても手が出ないほどに跳ね上がっているに違いない。

恐るべきスピードで飛躍を遂げる 21歳。

香川真司はこの後、どれだけの驚きを僕たちに与えてくれるのだろうか。

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