新監督のニックネームは「ザック」である。

ザックと聞いて、ヘヴィ・メタル界の生ける伝説オジー・オズボーンバンドの炎のギタリスト、ザック・ワイルドを思い出す人は 100人に1人くらいだろうけど、カルチョの世界で「ザック」と言えば、アルベルト・ザッケローニを置いて他にはいない。

おそらく歴代日本代表の中で、監督としての知名度は最も高い人物になるだろう。

イビチャ・オシムはワールドカップでベスト8を達成した名将だけど、ユーゴスラビア内戦という社会背景や本人の気質もあって、西側のビッグクラブで指揮を執ったことはない。
ハンス・オフトやフィリップ・トルシエは欧州では無名の監督で、ジーコやファルカンは監督経験自体がほとんど無いに等しかった。

その点、ザッケローニは全く違う。

イタリアのビッグ3、ACミラン、インテル・ミラノ、ユベントスの3クラブに所属した経験がある人物といえば、僕は真っ先にロベルト・バッジョの名前が思い浮かぶ。
言わずと知れた、イタリアサッカー界の象徴。

そしてアルベルト・ザッケローニは、監督としてバッジョと同じ偉業を達成している。

それはつまり、名将だと言うことだ。

迷走した監督人事

今回の日本代表監督の人選は、混迷を極めた。

マルセロ・ビエルサに始まり、ペジェグリーニ、バルベルデ、ビクトル・フェルナンデス、ペッケルマン、ファンバステン、クーマンと、次から次へと現れては消えたビックネームの数々。

結果的に本命たちにことごとくフラれた日本が、最後に釣り上げたのがザッケローニだった。

このリストを見ると、原技術委員長のこだわりが伺える。
原さんはとにかく、国際的なビッグネームにこだわった。

その発端はヨーロッパサッカーに明るい原さんの単なるミーハー感覚のような気もしないでもないけども、日本が次のステップに進むためにはビッグネームを連れてくるべきだ、という原さんなりの信念があったのだろう。
確かに、監督として未知数の人間を連れてくるよりは全然良いし、そもそもワールドカップで 16強を達成した日本代表は、もう無名の監督に任せるような時代ではないのは確かだ。

そして見事に大物との契約に漕ぎ着けたあたり、原さんのこだわりが吉と出たとも言っていいだろう。
さすが原博実、全国に “ヒロミスタ” と呼ばれる熱狂的なファンを持つだけのことはある。

僕は正直なところ、最初にザッケローニ監督の名前を聞いた時には、多少の違和感を感じた。

98-99シーズンにACミランでスクデットをとった実績はもちろん知っていたけれど、ここ10年の成績はパッとしていない。
昨シーズンも途中からユベントスを率いて名門の復活を託されたけれども、結果的には就任期間中の成績で負け越すなどして失敗している。
イタリアでも「過去の名将」と呼ばれているそうだ。

スペイン系にこだわっていた原さんが突如連れてきたイタリア人監督は、本命にフラれた挙句の妥協案。
とにかくビッグネームであればいいという、単なる苦肉の策に見えてしまったのだ。

だから僕は、当初はかなり眉唾ものでこの就任報道を眺めていた。

しかしもしかしたら、この人選は怪我の功名となるかもしれない。

カルチョの名将と日本の相性

「ザック」という軽快なニックネームを聞くと、何やらビバリーヒルズ青春白書にでも出てきそうな、赤いオープンカーと金髪美女が似合う典型的イタリアンの姿を想像してしまう。

しかしこのザッケローニ監督は、イタリア人にしては珍しいほど真面目で温厚な人柄で知られるそうだ。
ゴシップ記事とも無縁で仕事にしか興味がない、いわゆる「サッカー馬鹿」である。

イタリア時代は3-4-3にこだわるなど攻撃的な監督として知られていたけれども、それはあくまでもカテナチオ文化の中での話。
かつてトリノでザッケローニに直接指導を受けた大黒将志によれば、FWにも守備の約束事を求め、ディフェンスの指導もしっかりする監督らしい。
ザッケローニ本人も「自分ではバランスを重視する監督だと思っている」と語っている。

またウディネーゼ時代に、当時無名だったオリバー・ビアホフやマルシオ・アモローゾを発掘して、のちのリーグ得点王に成長させるなど、育成の手腕にも長けている。

穏やかで対話を重視する指導スタイルも合わせて、実は意外と日本に合うタイプの監督のようにも思えてきた。

セリエAで3位になったウディネーゼ時代、優勝したミラン時代にはいずれもフルシーズン指揮を執ったザッケローニ。

その後に率いたラツィオ、インテル、トリノ、ユベントスでは結果を残せなかったけれども、これらはいずれもシーズン途中からの就任である。

じっくりとチームに戦術を植え付けていくその指導スタイルは、長期契約の代表チームにはむしろ合っているのかもしれない。
何よりこれだけの実績を持つ監督だけに、指導力の高さには期待の持てるところだろう。

この人選はもしかしたら、原さんのファインプレーになる可能性も出てきた。

さすが原博実、息子さんが岩渕真奈と小学校時代に2トップを組んでいただけのことはある。
関係ないか…。

その中でも不安材料と言えば、短期決戦で結果を残す「勝負師」としての器量に欠けるように思える点だろうか。

ザッケローニはおそらくチームの構築に長けた「教師」タイプの監督で、勝負強さを売りにしているタイプではない。

温厚な人柄は日本人選手にも受け入れられるだろうけども、反面、チームがうまく回らなくなった場合に、どれだけモチベーションを鼓舞してチームを立て直せるか、という部分に一抹の不安は残る。

ただ、ワールドカップでここ3大会の優勝監督が、いずれもクラブレベルでも大きな成功を収めた監督であることからも、これからの代表監督にはクラブでの実績と指導経験がある「本格派」が求められる時代になってきていると僕は思っている。

その点から見ても、ザッケローニというのは可能性を感じさせるチョイスだろう。

ザッケローニという期待感

日本初のイタリア人監督、アルベルト・ザッケローニ。

そして本人としても初の海外での指導であり、初の代表監督だという不透明な部分もある今回の人選。

これが一つの博打であることは確かだ。

しかし、やる前から不安がっていても仕方がない。
そして少なくともザッケローニ監督には、期待できるだけの要素は充分に備わっていると言っていい。

当初は違和感を感じたこの監督人事。
しかしザッケローニという人物を知るにつけ、僕の中でその印象は変わりつつある。

ちなみにこんな時には、日常生活では滅多に使う機会のない、あのイカした台詞を使いたい。

とりあえず僕の今の感想はこうである。

「ここは一つ、お手並み拝見と行こうか」。

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