日本が初めてワールドカップに出場してから 12年が経った。
その初出場となった 98年フランス大会当時、日本代表は全て1点差での3戦全敗で大会を去ることになった。
ちなみにその時の代表監督は、今と同じく岡田武史である。

強豪アルゼンチンや、大会で3位となったクロアチアに負けたのはともかく、同じ初出場国のジャマイカにまで負けたことでそれなりに物議をかもす結果となったのだけど、全体的に見れば、当時の日本代表の実力からすればおおむね妥当な結果だったとも言えるだろう。

それから2回の大会を挟んで、この南アフリカ大会が日本にとっての4回目のワールドカップとなった。
この 12年間で、日本はどれだけ成長をしたのだろうか。

それを計る一つの試金石となったのが、この日のオランダ戦だった。

日本代表が見せた「健闘」

ちなみにこのブログでは、「ワールドカップ全試合観戦・全試合レポート」と「試合の行われた順でのレポート」を目指していたんだけれども、毎日3試合というのはなかなかにハードで更新が遅れがちになってしまいました。
なので、とりあえず第1節 16試合のレポートが終わったこのタイミングで、順番は前後するけど日本中が注目した日本対オランダ戦のレポートを書かせていただきたいと思います。

ちなみに結果に関しては、皆さんご存知の通りである。
前半を 0-0で折り返した日本だったけれども、後半に1点を奪われ、強豪オランダを相手に 0-1の惜敗を喫した。

しかし、この結果は健闘だと言っていいと思う。

アジアのライバルの韓国やオーストラリアは、同グループのシード国を相手に、それぞれ4点を奪われて敗れている。
このオランダ戦も、展開次第では2点目3点目を奪われていてもおかしくはない試合だった。
それを考えれば、最少失点でしのいだ日本は予想以上の戦いぶりを見せたと言ってもいいのではないだろうか。

その健闘の基盤となったのは、何と言っても安定した守備だろう。
阿部勇樹をアンカーに配置して以来、日本代表の守備力は目に見えて安定したけれども、このオランダ戦で強豪相手にもそれが通用することが証明された。

そして守備が安定したことで攻守のバランスが良くなり、逆に攻撃面でも効果的にチャンスが作れていたように思う。
得点には繋がらなかったけれど、最後までゴールを狙う姿勢をチーム全体が見せていた。
特に攻撃の選手に関しては、松井大輔と大久保嘉人の積極性が光っていた。

そしてこの「最後まで勝ちにこだわる姿勢」が、この後に大きな効果を生むことになる。

彗星のように現れた新守護神、川島永嗣

日本の喫した1失点には、反省すべき点と、ある程度やむを得ない点があったように僕は感じた。

反省すべき点は、ウェズレイ・スナイデルに完全にフリーでシュートを打たせてしまったことである。
スナイデルは今年の UEFAチャンピオンズリーグで優勝したインテルで 10番を背負う名手。特にそのキックの精度には定評がある。
さらに日本は、昨年秋のテストマッチでオランダに 0-3で敗れた試合でも、同じような位置からスナイデルに一撃を食らっている。
それだけ警戒する要素があったにも関わらず、スナイデルをフリーにしてしまったのはいただけなかった。

しかしシュート自体は素晴らしいものだった。

スローで見るとはっきり分かったけれども、このシュートはほぼ完璧な「無回転シュート」だった。
ただでさえ今大会の公式球『ジャブラニ』は、軽くて空気抵抗を受けやすく、この無回転シュートのために作られたようなボールだと言われている。
スナイデルの放ったシュートは、よく見ると GK川島永嗣の手前で妙な方向に変化しているのが分かった。
川島としても予測のつかない方向に急激に変化したのだろうと思われる。
このシュートへの対応に関しては、川島を責めるのは酷だと思う。

しかし川島は、この後に2つのビッグセーブでミスを帳消しにすることになる。

後半から投入されたオランダ代表の隠し玉、イブラヒム・アフェライは危険な動きで DFラインの裏に抜け出し、2回のGKとの1対1の場面を作る。
しかしこの絶体絶命のピンチを救ったのが、川島の好判断の飛び出しだった。
この決定的ピンチを2度に渡って封じた川島のスーパープレーによって、日本は失点を1に抑えることに成功したのである。

それにしてもカメルーン戦に続いて、今大会の川島の活躍には眼を見張るものがある。
大会直前まで楢崎正剛の控えと見られていたことが嘘のような大当たりっぷりだ。
これまで楢崎や川口能活ほど脚光を浴びることのなかった守護神が、サッカー人生最大の大舞台で持ち味を存分に発揮しているのは嬉しい限りである。

世間一般での知名度は高くはなかっただろうけど、川島永嗣の名前はサッカーファンの間では以前から知られていた。

僕が川島のプレーを初めてちゃんと観たのは、2003年のワールドユース(現 U-20ワールドカップ)である。
この大会に日本の守護神として参加した川島のプレーは、当時からひときわ輝いていた。

僕が日本人のゴールキーパーを見て、「こいつは凄い!」と思った1人目の選手は楢崎正剛なんだけども、それに続く2人目が川島永嗣である。
ちなみに3人目はサンフレッチェ広島の西川周作、4人目は FC東京の権田修一だ。

その 2003年ワールドユースで日本はベスト8まで進出したのだけれど、そこで現バルセロナのダニエウ・アウベスがいたブラジル代表に 1-5の惨敗を喫する。
観ていた僕たちとしても、世界との絶望的な差を痛感させられた非常にショッキングな敗戦だった。

そして当然、やっている選手たちにとってもショックは大きかったようである。
川島はこの試合後、「5失点目が悔しくて泣いた」と語っていた。
そしてこの悔しさが、川島の更なる成長の肥やしとなったことは間違いない。

その翌年川島は、日本代表の正守護神だった楢崎正剛のいる名古屋グランパスへと移籍する。
楢崎の間近でその技術を吸収するため、あえて同じチームでのプレーを選択した格好だったけれども、けっきょく楢崎の牙城は崩せないまま、名古屋時代の3年間は控えキーパーの座に甘んじることになる。

川島が表舞台から消えた3年間。
「プレーしてナンボ」のサッカー選手にとって、この3年間は大きな損失だと僕は思っていた。

不遇の3年間の後、2007年に川崎フロンターレに移籍した川島は、すぐさまレギュラーの座を確保して頭角を現す。
そして直後に日本代表にも招集されるようになったけれども、レギュラー争いの部分では名古屋時代と同様に、楢崎の控えの座から脱することができずにいた。

しかし川島は、最も大事なワールドカップの直前で、ずっと背中を追い続けた楢崎からついに正守護神の座を奪取する。
相撲で言えば貴乃花が千代の富士を倒して引退を決意させた時のような、鮮やかな世代交代の瞬間だった。
もちろん楢崎には、まだ再び代表レギュラーの座を目指して頑張って欲しいけれど。

ともかく川島の活躍もあって、このオランダ戦を最少失点で乗り越えた日本。

勝ち点を挙げることはできなかったけれども、追加点を許さなかったことには極めて大きな意味があった。
結果的にこの守備陣の頑張りが、次のデンマーク戦に向けて大きなアドバンテージを生むことになる。

健闘の末に手にした大きなアドバンテージ

日本対オランダ戦の後に行われたグループEのもう一試合、デンマーク対カメルーン戦は、デンマークの 2-1の勝利で終わった。
この結果によって、日本とデンマークは勝ち点3で並んだけれども、得失点差で日本がデンマークを上回って2位につけている。
つまり、最終節のデンマーク戦で引き分け以上ならば、日本はグループリーグを突破し決勝トーナメントに駒を進めることができるようになったのだ。
これの持つ意味は非常に大きいだろう。

もし日本があと1点以上取られていたら、日本はデンマーク戦で勝利が必須条件となっていた。
守備の固いデンマーク相手に、必ず得点を挙げなければいけなかったわけである。
逆にデンマークとしては失点さえしなければいいわけだから、かなりデンマークに有利な展開となっていたはずである。
それが、オランダに2点目を許さなかったことで立場が逆転したのである。

結果論になるけれども、仮にオランダ戦で引き分けに追いついていても、「デンマーク戦で引き分け以上が必要」という条件に変わりはなかった。
つまり日本にとってはオランダ戦で引き分けに追いつくことよりも、2失点目を与えないことの方が重要だったのである。

それだけに川島の2つのスーパーセーブは、計り知れないほどの大きな意味を持っていた。
川島と守備陣の頑張りによって、日本は大きなアドバンテージを手にしたのである。

その健闘の持つ大きな意味

ちなみにこの日のオランダは 100%の出来ではなかったと思う。
僕は大会前のテストマッチ数試合と初戦のデンマーク戦を観たけれども、そのうちでこの日の日本戦でのオランダが一番出来が悪かったように見えた。

それはもちろん日本がオランダの良さを出させなかったという側面もあるし、オランダが次戦以降を考えて力をセーブしていた部分もあっただろうと思う。

ただ何にせよ、オランダ相手に善戦したことの意味は大きい。
負けはしたけれども、決勝トーナメント進出に向けてはむしろ前進したと言ってもいいと思う。

大会前はあれほど期待されていなかった岡田ジャパンが、決勝トーナメント進出を現実的に考えられるところまで昇りつめたのだ。

ちなみにここまでの展開は、僕が以前に予想したグループEの展望と大きく外していないと思う。
そう、つまりちょっと自画自賛してみたわけです。申し訳ない。
でも今回は自画自賛させてください(笑)。

とは言ってもその一方で、「岡田ジャパンの決勝トーナメント進出の可能性はかなり低い」とも書いてしまっているので、けっきょく予想は外れているわけである。
ただ、それでもこれは嬉しい誤算であることに違いはない。

12年前の日本代表は、ひたすら守りきって失点を1点に抑えるのがやっとのチームだった。
しかし今の日本代表は、スコアは同じでも、守ってばかりのチームではない。
オランダ戦でも守備をベースにしながらも、しっかり攻撃でもチャンスを作っていた。
そして彼らは決勝トーナメントまで、あと一歩というところまで歩を進めている。

もう僕を含むブロガーや、サッカーライターと言われる人たちのチンケな予想などどうでもいいところまで日本はやってきた。
日本代表がいま考えることは、とにかく次のデンマーク戦に勝つ事だ。
結果的に引き分けになってしまった場合でも決勝トーナメントに進めるという保険を手に入れてはいるけれど、引き分け狙いはするべきではないと思う。
積極的に攻める姿勢の先にこそ歓喜は待っている。日本はあくまでも勝ちにこだわるべきだと思う。

思えば日韓大会以来、日本代表が本当に「絶対に負けられない」ガチンコ勝負に挑むのは8年ぶりではないだろうか。

サッカーファンとしては8年間、待ちに待ち続けたヒリヒリするような真剣勝負。
その時は、すぐそこにまで迫っているわけである。

ここまで僕らを楽しませてくれた岡田ジャパンに、僕は本当に感謝している。

なぜなら彼らのこの健闘が、日本中の人々がこんなにも夢中になれる瞬間を、再び与えてくれたのだから。

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