まさに「見事な勝利」だった。

僕の稚拙なボキャブラリーでは、この歴史的勝利を表現するのに、これ以上の適切な言葉を持たない。
ただ見事と言うしかないだろう。

日本中から3連敗を予想されていたチームが、3試合で勝ち点6。
そして決勝トーナメント進出を決めたデンマーク戦での2勝目は、期待をさらに上回るほどの、絵に描いたような快勝劇だった。

日本が失っていた「自信」

日本はなぜ急に生まれ変わることができたのだろうか。

結果論になってしまうけど、大会前の4連敗の頃、日本に最も欠けていたのは「自信」だったように思う。

思えば昨年までの岡田ジャパンは、決して悪いチームではなかった。

テストマッチではチリやオランダやガーナを相手に好ゲームを演じていたし、オランダ戦以外では結果も伴っていた。
ワールドカップ予選でもオーストラリアには負けたけれども、世界最速で予選突破を決めるなど危なげない勝ちっぷりを見せている。
チームのベースはこの時期にすでに出来つつあったのだろうと思う。

その歯車が狂い始めたのが、今年に入ってからである。

2月のベネズエラ戦でスコアレスドロー、続く東アジア選手権で3位に終わったことで、岡田監督に対する世間の風当たりが一気に強まった。
実際はこの時期はJリーグもオフシーズンなのでコンディションが整っていない選手も多かったのだけども、それを理由にあまり勝ちにこだわらない姿勢を見せてしまったのが岡田監督の誤算だった。

急激に強まったバッシングと、突如降って湧いた岡田監督解任論。

それを黙らすために、3月のバーレーン戦では勝ちにこだわった末に勝利を収めた日本代表。
しかしチームは「親善試合であっても負けられない」という、新たなプレッシャーを抱え込んでしまっていた。

4月のセルビア戦では、2軍の相手チームに対して 0-3の惨敗。

僕も現地で観戦したこの試合では、日本代表のプレーはスタンドから見ている分には無気力にしか映らなかったのだけども、実際は外部からの「負けられない」というプレッシャーに加え、「ワールドカップメンバーに残りたい」という2つ目のプレッシャーで、監督も選手も過緊張に陥ってしまっていたというのが真相らしい。

その緊張と主力選手のコンディション不良が重なって、テストマッチで結果を残せなくなった岡田ジャパン。
セルビア戦から続く4連敗ロードの中で、日本代表は昨年手に入れつつあった自信まで失ってしまっていた。

ただ、今の日本代表には、その自信が蘇ってきているような気がする。
それが、大会前と今とで最も大きく変わった部分ではないだろうか。

自信を持てるようになった直接的なきっかけは、何と言っても初戦のカメルーン戦だったろう。
ここで結果を残せたことで、日本は自信回復の大きなきっかけをつかんだはずである。
そしてオランダ戦で善戦したことで、その自信は確信に変わったのではないだろうか。
その結果のデンマーク戦の快勝劇ではないかと僕は思っている。

そしてカメルーン戦での最大の勝因は、日本代表が、見失っていた「型」を取り戻したことにあるのではないかと、僕は考えている。

岡田監督の決断した「開き直り」

ここで言う「型」とは、すなわち戦術である。
岡田監督が「世界を驚かせるサッカー」という理想を捨て、阿部勇樹をアンカーに配置した現実路線にシフトしたことによって、日本は自分たちの新たな「型」を手に入れた。

岡田監督はもともと、コンサドーレやマリノスを率いていた時代から、守備的戦術で結果を残してきた監督である。
それがオシム監督の後任となったことで、オシム流の「考えて走るサッカー」を継承する理想を掲げることになった。
それはある程度まではうまくいったけれども、テストマッチで戦ったオランダや韓国、イングランドのような強豪には通用しなかった。

そこで岡田監督は土壇場になって、本人が最も得意とする守備的な現実路線の戦術を採用したのである。

そしてそれが見事にハマった。
その結果の、決勝トーナメント進出である。

僕はこの岡田監督の「開き直り」が、日本の運命を劇的に変えた最大の要因ではないかと考えている。

デンマークを沈めた2本のフリーキック

とにもかくにも日本は勝った。

ワールドカップという大舞台で一番求められる「結果」を、日本代表は見事に出したのである。

試合自体はご存知のとおり、本田圭佑と遠藤保仁、2人の異なるキッカーが蹴ったフリーキックが2本決まるという、非常に珍しい形でリードした日本が、後半に PKで1点を返されたものの、終盤の岡崎慎司のゴールで突き放して 3-1で快勝した。

日本代表には本田と遠藤以外にも、中村俊輔と阿部勇樹という稀代のフリーキッカーが控えている。さらに中村憲剛も遜色ないフリーキックを蹴れるだろう。
これだけ多くのフリーキッカーを揃えているチームはそうは無いはずだ。
まさに日本人の正確な技術力が発揮される分野であり、ひいき目に見れば、これだけでも充分「世界を驚かせた」と言えるんではないだろうか。
フリーキックは今大会に限らず、今後も日本代表チームの大きな武器になっていくと思うし、そうなっていってほしいなと思う。

そしてこの試合で1ゴール1アシストを決めた本田は、世界のマーケットにその絶大な存在感を示した。
ワールドカップを経て、いよいよ本田は中田英寿のレベルに達しようとしている。

そして本田以外にも多くの選手が、大会後に海を渡るかもしれない。

そういう意味でも、日本サッカー界にとって大きなターニングポイントとなる勝利だったのではないだろうか。

この勝利がもたらしたもの

実際にはこのデンマーク戦での勝利から、すでに3日が経っている。

この試合を記事にするのにこれだけ時間が空いてしまったのは、僕が物理的に時間を取りにくかったという事情もあるのだけれど、それ以上に自分の中で、この勝利の持つ意味を消化しきれなかったのが大きかった。

僕はこの試合をリアルタイムで観戦していたのだけど、正直なところトントン拍子で得点が入ったこともあって、はじめはこの歴史的一勝にもあまり実感が沸かなかったというのが本音である。

しかしその後ニュースを見ては会社に行き、世間でこの勝利がどれだけ騒がれているかを目の当たりにして、後からジワジワとその意味を理解できるようになってきた。

僕のように日常的にサッカーを見続けている人間は、意外とそんなもんなのかもしれない。
試合後に本田圭佑が「思ったより嬉しさを感じなかった」と語っていたけれども、もしかしたらそれに近い心境だろうか。
まあ、実際に修羅場をくぐった選手と僕とでは比べものにならないけども…。

それでも巷では、早朝3時台のキックオフだったにも関わらずテレビ視聴率は平均 30%を超え、新聞社の号外は一瞬でさばけ切り、翌日のメディアはワールドカップ一色となっていた。会社や学校でも、この日はサッカーの話題が飛び交っていたことだろう。

これは立派な社会現象だと思うし、それを見ているだけでも、日本代表の成し遂げたことの大きさは感じることができた。

僕は日本が決勝トーナメントに進んでくれたこと自体は、もちろん嬉しい。
ただ何が一番嬉しいかと言ったら、これだけ世間一般でサッカーの話題がなされていることが心底嬉しいのである。

僕が普段Jリーグや海外サッカーの話題ができる相手は、一部のサッカー好きの人たちだけである。
代表戦も最近は視聴率が低下傾向にあったし、ほとんどの選手をワールドカップで見て初めて知ったという人たちも多いのではないだろうか。

例えそうだとしても、4年に一回でもこうやって国中でサッカーが話題になり、サッカーという競技や選手たちが注目してもらえる。
そしてサッカーを通じて日本中が元気になれる。

そんな明るい話題を、サッカー界が日本全国に提供できたということが、僕は心底嬉しいのである。
それだけでもサッカーという競技やJリーグが存在する価値はあったと思うし、僕がサッカーを応援し続けてきた甲斐もあったと思う。
サッカーファンをやってきて本当に良かったと、僕たちも痛感できる勝利だったのではないだろうか。

ただ、僕が本当にこの勝利の意味を理解できるようになるのは、たぶん大会が終わった後、もしかしたら数年後になるかもしれない。

この勝利によって、日本サッカーをとりまく環境がどのように変わるのか。
それを見届けた時が、初めてその意味を実感する瞬間になるのかもしれないなと、僕は思っている。

英雄になった岡田監督

そして忘れてはいけないのが岡田監督だ。

大会前は無能監督の象徴のような扱いを受けていた岡田監督。
しかしいま、彼は間違いなく英雄である。
たとえこの先の大会でどんな結果に終わろうとも、それが変わることはないだろう。

岡田ジャパンはそれだけの仕事を成し遂げたのだ。
誰もそれを否定することはできないと思う。

僕はこの勝利は、誰よりも岡田監督自身に噛みしめてほしいと思う。

あれほど日本中からバッシングを浴びながらも、さじを投げなかった岡田監督は立派である。
使命感と勇気のある人間でなければできないことだったろうとも思う。

そして岡田監督は見事に重圧に打ち勝ち、その責任を果たした。

大げさでなく僕は今後、岡田さんが犯罪でも犯さない限りは一生涯応援し続けるつもりである。

そして以前に「岡田ジャパンは決勝トーナメントには行けない」と書いてしまった僕は、再び岡田監督に謝りたいと思います。

岡田監督、本当に申し訳ありませんでした。
僕はあなたのチームを誇りに思います。

まあ謝ってばっかりも何なんでこのへんにしておくけれど、とにかく僕は岡田監督には頭が上がらない。
それくらいに大きなものを、岡田ジャパンには与えてもらったと思っている。

いざ、決勝トーナメントへ

さあしかし、大会はまだ終わったわけではない。
むしろベスト4を目指すのであれば、ここからが本番の勝負である。

日本との親善試合であれほど強さを見せつけていた韓国も、決勝トーナメント1回戦で敗退が決まった。
驚異的な勝負強さでイングランドを抑え1位通過を果たした、アメリカも然りである。

それだけ決勝トーナメントは厳しい戦いになる。

相手のネームバリューがそれほどでもないことから、パラグアイ戦を楽観視する向きもあるようだけど、それは大きな間違いだと断言したい。

ここまで来てやりやすい相手など一つもない。
中でも勤勉で実直でタフなパラグアイは、日本にとっては非常に嫌な相手になるだろう。

ポイントになるのはやはりセットプレーと、相手に先取点を与えないための、守備における集中力だと僕は考えている。

どちらがより集中を切らさないで、失点をゼロで抑え続けることができるか…。
おそらくはそんな我慢比べのような展開になるのではないだろうか。
延長戦に入る可能性も充分にあるだろうと僕は見ている。
日本にとっては精神的にも肉体的にもどれだけタフになれるかが問われる、まさに「死闘」と呼べるような戦いになるのではないだろうか。

ともかく日本はいま、大会前には笑い話でしかなかった「ベスト4」まであと2勝というところまで来た。
ここまで来たら本気でベスト4を狙って欲しい。いや、狙うしか無いだろう。

本田が言うとおり、まだまだ目標は先にある。

だから僕も、このデンマーク戦での勝利は「歴史的」ではあっても、「快挙」や「偉業」ではないと思っている。

彼らが本当に偉業を達成する時は、世界の4強の地に足を踏み入れた、その時になるはずなのだから。

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