グループAの混沌/ワールドカップ@フランス代表 0-0 ウルグアイ代表

今大会で「死の組」と呼ばれるのが、グループGなのは周知の事実である。

優勝候補のブラジルに、メッシと並ぶ世界ナンバーワンプレーヤー、クリスティアーノ・ロナウド率いるポルトガル。
そして(日本戦で故障してしまったけれども)アフリカナンバーワン選手と言われるドログバを擁するコートジボワール。

いずれも現実的にベスト4以上を狙える戦力を持つ3チームだ。
この3チームが揃ったグループは、確かに「死のグループ」と呼ぶにふさわしい。

しかし、このグループGには全くのアウトサイダーが1チーム存在するのである。

北朝鮮は、アジア予選を勝ち抜いたことすらサプライズと考えられているチームだ。
もちろんそれなりの力はあるだろうけど、北朝鮮がこのグループGを勝ち抜いたとしたら、それはもはや奇跡に近いだろう。

つまり、グループGは事実上、3チームで2つの枠を争う格好となりそうなんである。

それに対して、かなり実力の拮抗したチーム同士が四つ巴の形となるグループがある。
掛け値なしに4チームで2枠を争うわけで、その難しさはある意味で「死の組」を上回ると言ってもいいだろう。

それが、このグループAである。

混戦模様のグループA

グループAで最も実績があるのはフランスだろうと思う。
98年ワールドカップとユーロ2000の優勝チームであり、前回の06年ワールドカップでも準優勝に輝いている。

しかしそのフランスが、いま不振にあえいでいる。

ビッグトーナメント優勝の立役者だったカリスマ、ジネディーヌ・ジダンが引退。
ジダンとともに黄金時代を戦ったティエリ・アンリやダビド・トレゼゲ、パトリック・ビエラなどのベテラン勢にも衰えが見られ、いまフランスは新世代への移行期にさしかかっている。

ただそこはフランス、それでもフランク・リベリーやヨアン・グルキュフといった次代を担う選手も育ってきているのは、流石といったところだろうか。

しかし、レイモン・ドメネク監督の指導力には疑問が持たれていて、組織力は低く、チーム状態は芳しくない。
数年前ほどの圧倒的な強さは感じられないのが今のフランス代表である。

そんなフランスの対抗馬と見られるのがウルグアイとメキシコだ。

ウルグアイは過去2度のワールドカップを制した古豪。
人口 300万人あまりの小国だけれども、そのサッカーの伝統は守られていて、今でも多くの選手がヨーロッパのメジャーリーグで活躍している。

メキシコも中米を代表する強豪国だ。
近年では 2005年のU-17ワールドカップで優勝するなど若手が目覚ましい成長を見せていて、進境著しい。

実力派のこの2チームは、フランスをグループリーグ敗退に追い込むだけの力を充分に持っていると見ていいだろう。

そして最後の1チームが、開催国の南アフリカである。
実力的には他の3チームに劣るものの、何と言ってもホームでプレーできるアドバンテージは大きい。
開幕戦でもメキシコ相手に圧倒的に攻め込まれながらも、大観衆の声援をバックに神がかり的なプレーを見せて、1-1 の引き分けに持ち込んだ。

このように、どのチームをとっても完全なアウトサイダーが存在しないのがグループAである。
どのチームにも決勝トーナメント進出の可能性があって、逆にどのチームもグループリーグ敗退の危険性と背中合わせである。
僕が思うに、ある意味で最もタフなグループ。それがこのグループAなのだ。

そしてそのうちの2チーム、フランスとウルグアイがこの試合で激突したのである。

拮抗した勝負となったフランスとウルグアイ

どちらもワールドカップ優勝経験を持つ強豪だけに、試合は拮抗した内容となった。

全体としては、やはりと言うか以外にもと言うべきか、個々のタレントに勝るフランスがゲームをリードする展開。
しかし、南米の大会では隣国の大国、ブラジルやアルゼンチンを相手に互角の戦いを見せるウルグアイだけに、自慢の堅守で最終ラインを割らせない。

フランスはリベリー、グルキュフの「ファンタジスタ」たちがチャンスを創造したけれども、ウルグアイも守備の要のディエゴ・ルガーノやGKフェルナンド・ムスレラらが堅陣を築く。

逆にウルグアイのアタック陣は、期待のルイス・スアレスが不発。
ディエゴ・フォルランはキレのある動きを見せていたけれども、前線で孤立気味となってしまって、フランスDF陣の前に大きなチャンスは作れなかった。

けっきょく試合はスコアレスドローに終わった。
実力拮抗のグループAを象徴するような、静かな緊張感のある試合だったと思う。

これでグループAは各チーム1試合ずつを終え、全チームが勝ち点1で並ぶ展開。
早くも混戦の様相を呈してきた。

まだ2試合ずつを残すものの、おそらく最後までかなり僅差の勝負になるだろう。

目が離せない「もう一つの死のグループ」

この「裏・死のグループ」を生き残るのはどの2チームだろうか。
個人的な予想では…と言いたいのだけれども、また予想を外すとアレなんでここは止めておきます…!

ただ、たぶん南アフリカはグループを突破するんではないかと僕は思っている。

これは多分に願望も含まれるけれども、開幕戦の戦いぶりを見る限りでは南アフリカにはツキがある。
短期決戦ではこういうツキの要素も大きな意味を持ってくるんではないだろうか。
戦力的に劣る南アフリカだけれども、この大会ではサプライズを起こしてくれような気がするのである。

南アフリカがグループを突破するとしたら、残るもう1チームはどこになるんだろうか?

このグループAの展開は、大会前半の大きな楽しみの一つになりそうである。

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