「フットボールは単純なスポーツだ。11人対11人でボールを奪い合い、最後にはいつもドイツが勝つ」。

かつてワールドカップ得点王にも輝いたイングランドのストライカー、ギャリー・リネカーの有名な言葉である。

ドイツ代表は 96年のユーロを最後に、メジャータイトルから見放され続けて久しい。
しかし 70年代から 90年代にかけてのドイツは、あのブラジルをも凌ぐほどの「世界最強チーム」だった。

72年から 96年にかけて、ドイツは実にヨーロッパ選手権で3度の優勝と2度の準優勝、ワールドカップで2度の優勝と2度の準優勝に輝いている。

そのプレーぶりは無骨で、華麗なサッカーとは無縁のプレーぶりだったけれど、それでもドイツはまさに無双の強さを誇っていた。
リネカーの言葉通り「最後にはいつもドイツが勝って」いたのである。

しかし、近年のドイツは低迷が続いている。

勝ち続けたことの弊害から若年層の育成が疎かになり、それが代表チームの弱体化を招いたのである。
勝つのが当たり前だったドイツも、ここ 14年間はタイトルと無縁の時代を過ごしてきたのだ。
まあそれでも 02年ワールドカップと 08年ユーロで準優勝、06年ワールドカップで3位という成績は、他国からすれば決して悪いものとは言えないんだけども…。

そんなドイツだけれども、10年くらい前からは方針を見直し、若手の育成に力を注ぐようになってきた。
そしてその中から、バスティアン・シュバインシュタイガー、ルーカス・ポドルスキー、フィリップ・ラーム、トーマス・ミュラー、トニー・クロースといった次代を担うタレントがキラ星のごとく出現したのである。

そしてそのドイツが、今大会からアジアへと転籍したオーストラリアと対戦した。

ドイツとオーストラリア、ヨーロッパスタイルの激突

サッカーにおいては、「タイプの近いチーム同士の対戦は順当な結果になりやすい」と言われている。

ドイツとオーストラリアの2チームは、ともにフィジカルの強さと組織戦術を主体としたヨーロッパスタイルのチームだと言えると思う。
そういう意味で、このゲームは同タイプの2チームの対決だったと言えるだろう。

オーストラリアはアジア連盟所属のチームだけれど、言語や文化的にヨーロッパに近いこともあって、選手の多くはヨーロッパでプレーしている。

加えて国内にプロリーグができたこともあって、近年では目覚しい強化を進めている。
日本代表もワールドカップ予選で対戦し、1分け1敗とねじふせられた、アジアを代表する強豪国だ。

ヨーロッパの大国ドイツに対しても、オーストラリアなら何かやらかしてくれるんじゃないだろうか。
僕は戦前、そんなほのかな期待を寄せていたのである。

しかし見せつけられたのはオーストラリアの勢いではなく、復活の兆しを見せる大国ドイツの、容赦ないほどの強さであった。

ドイツにあり、オーストラリアになかった「推進力」

組織的なサッカーを実践するオーストラリアは、この試合でも高い位置からのプレッシングをかけていた。
その点においてはドイツとも互角に渡り合っていたと言えるかもしれない。

反面、オーストラリアに欠けていたのは「ボールを前に運ぶ力」である。
プレッシングでボールを奪っても、オーストラリアの攻撃陣は、ドイツの組織的な守りの前にすぐにボールを奪い返されていた。
結果としてオーストラリアは前半立ち上がりのコーナーキックの場面を除いて、ほとんどチャンスらしいチャンスを作れなかったのである。

しかし、ドイツは違った。
オーストラリアのハイプレッシャーを受けながらも、ドイツの選手たちはそれをかいくぐって、さらにボールを前進させる力を持っていたのである。

そしてその圧力の前に、オーストラリアの牙城はすぐに決壊した。

先制点が生まれたのは前半8分。
メスト・エジルのスルーパスからトーマス・ミュラーが右サイドに抜け出し、逆サイドにセンタリング。
ここに走り込んだポドルスキーが豪快なミドルを突き刺し、あまりにも早い時間帯にドイツが先取点を奪った。

実力上位のドイツがあっさりともぎ取った先制点。
こうなると、試合はもうドイツのものだった。

26分にはラームのセンタリングから、前回大会得点王のミロスラフ・クローゼが頭で追加点。
後半になってもミュラー、カカウが加点し、ドイツが 4-0で試合を締めくくった。

まさに水をも漏らさぬ圧勝劇。
アジアの強豪は、かつての世界王者の前にまったく何もさせてもらえなかった。
僕たちアジア人からしてみれば、なかなかに残酷な現実を見せつけられた一日となったのである。

ドイツが歩み始めた「最強への道」

ドイツは間違いなく、かつての強さを取り戻しつつあると思う。

ちなみにこの試合で僕が最も衝撃を受けたのが、ドイツ代表の8番、メスト・エジルである。

1点目と4点目の起点となったエジルは、試合全体を通してもスーパープレーを連発していた。

僕は普段ブンデスリーガを見る機会があまり多くはないので、エジルの名前は知っていたけど、プレーをちゃんと見るのはこの試合が初めてだった。

個人的には、エジルはここまでの今大会での最高の驚きである。

トルコ移民の2世ということで、ドイツ人らしからぬテクニックと創造性を併せ持つエジル。
無骨なドイツ代表の中で、その華麗な足技はひときわ際立っていた。
さすがに、弱冠 21歳でドイツ代表のトップ下のレギュラーを張る実力は伊達ではない。

エジルは大会を通じて、僕がじっくり追いかけていきたい選手の一人である。

それではエジルのようなタレントを擁するドイツは、優勝まで手が届くのだろうか?
僕の勝手な予想では、それでも答えはノーだと思う。

ドイツは確かに強力なチームだけれども、ブラジルやスペインといった真の強豪と対峙した時に、本当の「切り札」となるようなエースがいない。

エジルやミュラーはまだ若く、メッシやルーニー、カカーほどの存在感はまだ発揮できていないと思う。
苦しい展開になった時に頼れる「絶対的エース」がいないドイツは、優勝するにはまだ足りないものがあるように僕は思うのだ。

ただそれでも決勝トーナメント1回戦くらいまでは、ドイツは無敵の強さを誇るだろう。
ドイツはいつもそんなチームである。

ワールドカップベスト8敗退がいつでもビッグサプライズとみなされるのは、世界広しと言えどもブラジルとドイツくらいなものだろう。

そしてドイツは、再び着々と「最強」への階段を昇り始めている。

たとえ僕の予想が当たって、今大会では手が届かなかったとしても、ドイツは近い将来必ず世界チャンピオンの座を奪回するだろう。

なぜならサッカーは、最後にはいつも「ドイツが勝つ」からなのである。

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