イタリアといえば「カテナチオ」である。
伝統的に守備の強さを誇り、ことディフェンスに関しては世界ナンバーワンの国だと言っていいだろう。
対するパラグアイも、南米大陸でもとりわけディフェンスの強さで知られた国である。
この対戦は、そんなディフェンス自慢の両国が、その持ち味を存分に発揮した一戦となった。
イタリアの見せつけた「芸術的守備」
試合は予想通り、序盤から激しいプレスの応酬となった。
ともに屈強なDFを抱えると同時に、洗練された守備戦術も備えている。
その卓越したディフェンス合戦は見応えのあるものとなった。
とりわけイタリアのセンターバックコンビは素晴らしかった。
ファビオ・カンナバーロとジョルジオ・キエッリーニのコンビは、まさに「鉄壁」と呼ぶにふさわしい。
とにかく普通の選手よりも圧倒的に守備範囲が広い印象である。
バイタルエリアに少々ルーズなボールが入ろうものなら、それが相手FWに渡るか渡らないかというタイミングでそれをかっさらってしまう。
卓越した読みの鋭さがなせる技なんだろうけど、素人がパッと見ただけでもそのディフェンスの素晴らしさが分かるくらいなのだから相当のものだろう。
カンナバーロは前回大会でも圧倒的なディフェンス力を見せて優勝に貢献。
見事その年のバロンドールを獲得した。
初のディフェンス一辺倒の選手が獲得したバロンドールということで一部では賛否両論あったそうだけど、僕はこの人選にかなり納得したのを覚えている。
それほど 06年のカンナバーロは素晴らしかった。
そしてその力が、少しも衰えていないことをこの試合でも証明したのである。
違いを生んだイタリアのアタック力
対するパラグアイも、かつてのチラベルトやガマラのような超一流の選手こそいないけど、DF陣には相変わらず能力の高い選手が揃っている。
この試合でも、ディフェンディングチャンピオンのイタリアの攻撃を抑えこむことにほぼ成功していた。
このように、両チームはともに非常に高いディフェンス力を誇る。
しかし、イタリアとパラグアイの最大の違いは攻撃力になるだろう。
パラグアイの攻撃陣がイタリアDF陣にほぼ完璧に封じ込められていたのに対して、イタリアのアタックはダニエル・デロッシ、リカルド・モントリーボ、シモーネ・ぺぺらが何度か好機を作り出していた。
特にぺぺの突破力はパラグアイ守備陣を何度となく混乱に陥れていたように思う。
この好調が続けば、ぺぺはイタリアの大きな武器になるだろう。
しかし、先制点を奪ったのは意外にもパラグアイのほうだった。
前半39分、セットプレーからアントリン・アルカラスがゴールゲット。
ワンチャンスを物にする、シナリオ通りの一点でパラグアイが優位に立つ。
しかし、そこで逃げ切りを許すディフェンディングチャンピオンではなかった。
後半 70分、イタリアはコーナキックからダニエル・デロッシのゴールで同点に追いつく。
けっきょくこのまま試合は終了。
華麗なるディフェンスの競演は、ドローという結果で幕を閉じた。
真の一流のディフェンスとは
グループ最大の難敵を相手に勝ち点1というのは、両チームにとって悪くない結果だろう。
ともにグループリーグ突破に1歩前進したと言ってもいいと思う。
ちなみに仮に日本がグループリーグを突破した場合、決勝トーナメント1回戦で当たるのはこのグループを勝ち抜いたチームである。
今日の試合を見る限り、どちらと当たったとしても苦戦は免れないだろう。
ともあれ、この試合で両チームが見せてくれた華麗なるディフェンスは、サッカーの一方の楽しみを教えてくれた。
守備的戦術は「アンチフットボール」と呼ばれることもあるけれども、真に一流のディフェンスなら立派なエンターテイメントになるのである。
伝統的にディフェンシブなこの両チームが、それでも世界中にファンを持つ理由の一端が、この試合で垣間見れたのではないだろうか。
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