グループGは「死の組」と言われている。
大会でも上位を狙える3チームが同居しているから、というのがその理由だ。
しかし、死の組と言っても序列がないわけでもない。
優勝候補のブラジルの優位は動かないだろう。
もしブラジルがグループリーグで敗退するようなことがあれば「事件」としか言いようがないと思う。
それくらい、何だかんだ言ってもブラジルは抜きん出た力を持っているだろう。
そして北朝鮮はやはりアウトサイダーになってしまう。
ブラジル相手にいい試合を見せ、侮れない相手だということは証明したけれども、それでも2位争いに食い込むだけの力を持っているとは思えない。
となると、実質的にはこのグループは、ポルトガルとコートジボワールの対決だと言ってもいいのではないだろうか。
そしてこの「死の組」は、いきなりその両国の直接対決で幕を開けたのである。
無難な戦いに終始した両チーム
結果から言ってしまうと、この試合はスコアレスドローだった。
両チームともにヨーロッパの主要リーグで活躍するスター選手を多く抱えるため、見ごたえのあるプレーは随所に見られた。
ただ、試合そのものは大きな盛り上がりの無いまま終わってしまった印象である。
両チームとも守備組織は安定していたように思う。
ただ、攻撃は迫力を欠いていた。
ポルトガルは前線に多くのタレントを抱えながらも、コンビネーションが噛みあわない。
本来なら中盤の要となるデコ、ダニーはどちらもほとんど存在感を見せることができず、後半に交代。
エースのクリスティアーノ・ロナウドは調子も良さそうだったけれども、前線で孤立して決定的なプレーを見せることはできなかった。
対するコートジボワールは、やはりエースのドログバを、日本戦での故障で失ったことが大きかった。
前線で核となる選手を欠いたため、攻撃は個人技だよりの単調なものになってしまったように思う。
ドログバは後半 66分から強行出場したものの本調子とは言えず、大きなインパクトを残すことはできなかった。
けっきょく両チームともに大きな見どころを作ることのないまま、スコアレスで試合は終了したのである。
肩透かしに終わった天王山
ワールドカップの初戦は難しいものだと言われている。
実際、過去の大会で、初戦で負けたチームの9割近くが決勝トーナメントに出場できなかったというデータもある。
両チームとしては、難敵相手にリスクを冒したくないという計算もあったのかもしれない。
だとしたら、引き分けで終われたことはまず悪くない結果だったのだろうか。
しかし僕は正直、ちょっと疑問を感じてしまった。
この両チームは、2位争いの直接のライバルとなるチーム同士である。
ここを引き分けで終えれば、確かに首は繋がる。
けれども、ではどこでライバルに差をつけるつもりなのだろうか?
北朝鮮戦はどちらも勝ちを計算に入れているだろうから、そうなるとブラジル相手に勝ち点を奪う必要が出てくる。場合によってはブラジルに勝たなければいけない展開になってくる。
しかしブラジルに勝つよりは、この試合で勝つ方がまだ簡単なのではないだろうか?
あるいは相手が北朝鮮に取りこぼすことを期待してるのだろうか。
それではあまりにも他力本願なように映る。
得失点差で上回ることを考えているのかもしれないけども、それは運任せの要素が強すぎる。
僕の考えでは、この試合こそが両チームにとっての天王山だった。
しかし両チームのプレーからは、そんな緊張感はあまり感じられなかった。
初戦だったからだろうか、とりあえずリスクを冒さずに無難に試合をこなした、という印象である。
「でもそれってけっきょく、苦しいことを先送りにしただけなんじゃないの?」
と僕は感じてしまった。
それでもコートジボワールはまだ分かる。
エースのドログバが完全でないので、勝負に行きたくても行けなかった事情もあったのかもしれない。
しかしポルトガルはどうしたものか。
ライバルはエースを欠いていた。叩くには絶好のチャンスだったはずである。
しかし、ポルトガルのカルロス・ケイロス監督は、是が非でも勝つという姿勢を最後まで見せなかった。
そしてそのまま、試合は終了したのである。
「失われた危機感」の結末は?
もちろん僕はただのシロートで、ケイロス監督やコートジボワールのエリクソン監督は、世界に名だたる名監督である。
僕なんかよりもよっぽど深い考えがあって、この結果を選んだのかもしれない。
しかし、それでもどうにも腑に落ちないのである。
いったいここで勝たずして、どこで勝とうと言うのか。
リスクを冒さずして勝ち上がれるほど、「死の組」は甘くないんではないか?
素人の僕はそう考えてしまうのだ。
今日の結果が、2位争いにどう影響するのかはまだ分からない。
しかしこの2チームのどちらかは、必ずこの試合を後悔することになるように、僕には思えた。
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