開催国が大ブレーキである。
大会的には非常にまずい状況になった。
これまで開催国が決勝トーナメントに進めなかったことが一度もないワールドカップ。
その伝統が、かなりの確率で消滅しようとしている。
南アフリカが決勝トーナメントに進むためには、もはや奇跡に期待するしか無くなってしまったのだ。
南アフリカ、不運にも見舞われた完敗
南アフリカ代表の、大会開幕前のFIFAランキングは 83位。
下馬評は決して芳しいものではなかった。
しかし開幕前のテストマッチを 12戦無敗で乗り切って、大会前に急激に調子を上げてきた。
そして開幕戦では格上のメキシコを相手に引き分け。
決勝トーナメントへの光明も見えてくる好スタートである。
その矢先のこの大敗。
確かにウルグアイは、南アフリカに比べれば1段2段も完成度の高い相手だったことに違いはない。
しかしこの日の南アフリカも、プレーそのものは第1戦よりもいい内容だったように思う。
ただ、開幕戦ではメキシコに何度となく決定機を作られながらも1失点に抑えるなど運にも恵まれた南アフリカも、この試合では逆に運に見放される。
ディエゴ・フォルランの1点目は強烈なミドルシュートだったけれども、DFに当たってコースが変わったことで決まってしまったもの。
さらには第1戦でスーパーセーブを連発したGKイトゥメレング・クーンが、ゴール前でウルグアイの選手と1対1になったところを倒してしまい痛恨のレッドカード。
守護神を失った上にPKを決められ、この試合の南アは完全に崩壊してしまった。
ほぼ絶望となった決勝トーナメント
この敗戦は南アフリカにとって痛すぎる敗戦だった。
グループAのもう一試合、フランス対メキシコでメキシコが勝利したため、このグループはメキシコとウルグアイが勝ち点4で抜け出し、それを勝ち点1の南アとフランスが追う展開になった。
南アとしては最終節のフランス戦で勝つのが決勝トーナメント進出の絶対条件となるのだけれど、仮に勝ったとしてもメキシコとウルグアイの試合が引き分けに終わった場合は2位以内に手が届かない。つまり、すでに地力での2位以内が消滅しているのである。
しかもこの大敗によって得失点差で不利に立たされれる南アフリカは、仮にメキシコがウルグアイに負けてくれたとしても、最低でもフランス相手に4点差以上の勝利が必要になる。メキシコが勝った場合には5点以上が必要だ。
今大会は不調とは言えサッカー大国であるフランス相手に、格下の南アフリカがこの点差で勝ったとしたら奇跡と言うしかないだろう。
実質的には、南アの決勝トーナメント進出はほぼ絶望的だと言ってもいいかもしれない。
崩れつつある開催国の伝統
開催国が決勝トーナメントに進めないとしたら、これはワールドカップ始まって以来の出来事である。
ただ、同じく開催国が決勝トーナメントに進出しなかったことがなかったヨーロッパ選手権では、2000年のオランダ・ベルギーの共同開催時にベルギーがグループリーグで敗れたことでその伝統が崩壊していた。
さらに2008年大会では、共同開催国のオーストリアとスイスがどちらも決勝トーナメントに進めないという失態を演じている。
かつてはサッカーの伝統のあるヨーロッパや中南米でしか開催されていなかったワールドカップも、北米やアジア、そして今回初となるアフリカで開催されるなどワールドワイドなものになってきたことで、その副作用として開催国が決勝トーナメントに進めない事態が起こるのは、ある意味では時間の問題だったのかもしれない。
開催国に期待したい最後の意地
ただ、南アに追い風が吹いていないわけでもない。
最終戦で対戦するフランスは、敗れたメキシコ戦でのハーフタイムに、エースストライカーのニコラ・アネルカがレイモン・ドメネク監督に罵声を浴びせたとして強制送還される事件が発生。
さらにはそれに抗議した監督・選手たちが練習をボイコットするなど、チームとして崩壊状態にある。
この隙を南アフリカが突くことができれば、あるいは奇跡が起こるかもしれない。
ワールドカップに開催国の出場枠が設けられているのは、開催国が活躍することで大会が盛り上がるからである。
大会全体のことを考えれば、南アフリカ代表がここで消えてしまうのは大きな損失だと言っていいだろう。
南アフリカにはぜひ、最後の意地を見せてもらいたい。
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