グループリーグの第2節は面白い。
それはこの試合でグループリーグの大勢が決するからであり、第1節を落としているチームの場合は、この試合で連敗すればグループリーグ敗退がほぼ決定するからである。
そしてこのギリシャ x ナイジェリアの試合は、そんな第1節で敗れて崖っぷちに立たされたチーム同士の、文字通りのサバイバルマッチとなった。
サプライズを起こしたマイナー国、ギリシャ
ギリシャ代表は6年前のヨーロッパ選手権で優勝に輝いた、かつてのヨーロッパチャンピオンである。
しかしこの優勝はまさに大番狂わせと言うべきもので、ユーロの歴史の中でも 92年のデンマークの優勝と並ぶスーパーサプライズだった。
ギリシャはヨーロッパの中でも古くからサッカーが盛んな土地柄だったけれども、地理的に西側諸国から遠く離れていることと、経済力で西側に劣ることから、代表チームは長らくめぼしい成績を残せない時代が続いていた。
そんなギリシャが初めてワールドカップに出場したのが 94年のアメリカ大会である。
初めての大舞台ということで、当然国民からは大きな期待がかけられていたことだろう。
しかしこの大会でギリシャは、アルゼンチンとブルガリアにそれぞれ 4-0の大敗を喫するなど3戦全敗、1ゴールも挙げることのできないまま大会から去ることになる。
その後は再びワールドカップでもヨーロッパ選手権でも本大会に出場できない日々が続き、久しぶりに出場したビッグトーナメントが前述の 2004年のヨーロッパ選手権だった。
それだけに、ギリシャの優勝はビッグサプライズだったのである。
しかしその後はまた 06年ワールドカップの出場を逃すなど、マイナー国に戻った感のあったギリシャ。
今大会は実に 16年ぶりとなる、久しぶりのワールドカップ出場だった。
そしてそのギリシャがこの日にサバイバルマッチを戦った相手は、16年前に 2-0で完封負けを喫した相手、ナイジェリアだった。
サバイバルマッチを制したギリシャ
互いに「絶対に負けられない」この一戦は、あっけない形で先制点が生まれる。
前半 16分、ナイジェリアのカル・ウチェの蹴った FKは味方に合わせることを狙ったような弾道だったのだけれども、それがそのままゴールインしてしまい、ナイジェリアがラッキーな先取点をゲットする。
ギリシャにとっては非常に嫌な展開。
ここまでワールドカップ通算4試合で4連敗を喫しているどころか1点も挙げられていないギリシャが、このゲームでもワールドカップとの相性の悪さを露呈するのかと思われた。
しかし一つのプレーから、ゲームの流れは一変する。
ナイジェリアのサニ・カイタがギリシャのバシリオス・トロシディスに蹴りを入れて一発退場。
このつまらない反則で、ナイジェリアの優勢ムードは一気に霧散した。
そしてこの隙を見逃さなかったのが、ギリシャを率いる名将、オットー・レーハーゲルである。
6年前にギリシャに初のメジャータイトルをもたらした老将の動きは速かった。
数的優位に立ったと見るやいなや、すぐさま DFパパスタソプーロスに代えてFWのゲオルギオス・サマラスを投入し、前線を厚くする。
この采配はズバリ当たった。
ここからギリシャは猛攻をしかけ、立て続けにチャンスを創り出す。
そして前半終了間際の 44分、コンスタンティノス・カツラニスのポストプレーから、ディミトリオス・サルピンギディスのミドルシュートが決まって同点に。
これがギリシャのワールドカップ通算5試合目にして、記念すべき初ゴールとなった。
迎えた後半は、両チームともがカウンターの応酬をかけるような大味な展開となる。
ともに決定機を演出しながらも、両軍ゴールキーパーのアレクサンドロス・ツォルバスと、ビンセント・エニェアマのスーパーセーブもあってなかなか得点は生まれない。
特にエニェアマは第1戦に続いて神がかり的なセーブを連発。
すでにプレミアリーグのチームが移籍金を用意しているとの情報もあって、今大会をきっかけに飛躍する選手の一人になるかもしれない。
しかし数的優位に立つギリシャが、ジワジワとナイジェリアゴールを侵食し始める。
そして後半 71分、CKからのアレクサンドロス・ツィオリスのミドルシュートを、ここまで大活躍を見せていたエニェアマが痛恨のファンブル。
そこをトロシディスが詰めて、とうとうギリシャが逆転に成功した。
逆転を許したことでナイジェリアは完全に集中力が切れ、組織が崩壊。
アフリカチーム特有の悪癖をひきずったまま試合は終了し、このサバイバルマッチはギリシャが制する結果となった。
混戦のグループB、その行方はいかに?
この勝利で 16年越しのワールドカップ初勝利を飾ったギリシャ。
これで勝ち点を3としたギリシャは、最終節へ首の皮一枚を繋げた格好である。
ただし、最後の相手は 16年前に惨敗を喫したアルゼンチン。まだまだ予断は許さない。
対するナイジェリアは2連敗と、2位争いから大きく後退。
ただし、最終節で韓国に勝ち、ギリシャがアルゼンチンに敗れればまだ2位通過の可能性は残されている。
このサバイバルマッチを制したのはギリシャだった。
しかし、混戦のグループBの行方は、最終節まで明らかになることはない。
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