アルゼンチンが凄いことになっている。
世紀の迷監督と思われたマラドーナ率いるアルゼンチンが、ワールドカップで開幕2連勝。
しかも圧倒的な強さを見せつけているんだから、勝負というのは蓋を開けて見ないと分からないものである。
そしてその原動力になっているのが、世界一と言ってもいいほどの圧倒的な「個」の能力だった。
圧倒的な「個」を誇るアルゼンチン
アルゼンチンの象徴は、言うまでもなく世界ナンバーワンプレイヤーのリオネル・メッシだ。
しかしアルゼンチンは決してメッシのワンマンチームではない。むしろメッシがいなくても、大きく戦力が落ちないだけの圧倒的な選手層を誇っている。
テベス、イグアイン、ディマリア、ベロン、マスチェラーノ、サムエル、デミチェレス、エインセらのワールドクラスの選手を多数抱え、ディエゴ・ミリートやアグエロが控えに回るほどの超豪華布陣。
しかも召集外の選手を見ても、リケルメ、サネッティ、カンビアッソ、ガブリエル・ミリート、アイマール、サビオラなどなど、これで優勝を狙えるチームが一つできてしまうんじゃないかと思えるほどの充実ぶりだ。
これだけ凄いメンバーが揃っていたら勝てて当然という気がするけども、そう簡単にはいかないのがサッカーである。
しかし、それでもここまでのアルゼンチンは、選手名鑑から受けるイメージ通りのサッカーをやっていると言っていいだろう。
この試合でもメッシは凄かった。
キレキレのドリブル突破、パス、シュート。それはもう誰にも止められない「神の域」に達しているようにすら思える。メッシに唯一足りないのはゴールだけだった。
そしてこの日、メッシに負けず劣らずの活躍を見せていたのがテベスである。持ち味の強引なドリブルで何度も韓国の包囲網を突破していた。
彼らの活躍に引っ張られ、アルゼンチンは韓国相手に予想を上回るほどの圧勝劇を披露してみせたのである。
漫画の世界に住む軍団、アルゼンチン代表
韓国も決して悪いサッカーをやっていたわけではない。
しかしアルゼンチンは、圧倒的な「個の力」で攻守に韓国を制圧してしまった。
僕は前節の記事で、韓国は今大会の台風の目になるかもしれないと書いた。
それくらい、韓国が快勝したギリシャ戦はインパクトがあったんだけども、その「台風の目」をアルゼンチンがいとも簡単に喰らってしまった感じである。
強い者が勝ったと思ったらすぐに、さらに強い者が登場する。
これぞまさにジャンプ・コミックスのような世界観。
アルゼンチン代表はまるで実写版・南葛イレブン、リアル神田神保町、二足歩行をする集英社のようである。
我ながらこの例えもどうかと思うけど、かのアーセン・ベンゲルもメッシのことを「プレイステーションの中に住む選手」と評していたくらいだから、そうそう的はずれな表現でもないだろう…たぶん。
しかし今大会のアルゼンチンほど「漫画から飛び出してきた」という表現が似合うチームもそうは見当たらない。
プレステの住人メッシに率いられたスター軍団が、サッカー界いちキャラの立つ男マラドーナ監督のもと、個人技ビュンビュンのウイイレばりのサッカーを披露しているのである。
それはまさに、漫画に劣らないほどの「スーパー・サッカー・エンターテイメント」だった。
現実の世界に咲く「真実の華」
開幕戦は素晴らしいスタートをきった韓国だけども、この大敗で初戦の貯金を使いきってしまった。
最終節は難敵・ナイジェリアを相手に、勝ちを狙うゲームが求められてくる。
対するアルゼンチンは絶好調。
黒星を喫したスペインやドイツやフランス、格下相手に苦戦を強いられたイングランドやオランダ、イタリア、ブラジルなど強豪国が軒並みつまづきを見せている今大会で、アルゼンチンはここまでの大会の主役になっていると言ってもいいだろう。
ただし、漫画のようなシンデレラストーリーが最後まで続くほどワールドカップが甘いものではないことは、僕たちサッカーファンはよく知っている。
漫画から飛び出したスター軍団・アルゼンチン代表も、いつか世知辛い現実の壁に直面すると僕は見ている。
それは次の試合かその次か、はたまた全7試合を漫画のように勝ちきってしまうのか ー 。
でもひとつだけ言えることがある。
たとえどんな結果に終わろうとも、今大会のアルゼンチンは、間違いなく僕たちを楽しませてくれている。
それは決して漫画ではなく、現実の世界に咲く「真実の華」なのである。
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