どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
強豪と言われるチームでも、一度かけ違えたボタンを元に戻すのは容易ではない。
前回チャンピオンのイタリア代表がはまった「負のスパイラル」。
その最初の小さなきっかけとなったのは、たぶんこのニュージーランド戦であった。
イタリアが陥った、まさかの番狂わせ
今年のヨーロッパチャンピオンにも輝いたインテル・ミラノほか、世界に名だたる強豪クラブを多く抱えるイタリア・セリエA。
そこで活躍するプレイヤーたちを揃えたイタリア代表「アズーリ」にとって、ラグビーの印象しかない国ニュージーランドは、警戒すべき相手とはほとんど考えていなかったはずである。
前半7分に FKからカンナバーロのミスで失点をした後でも、それは大きく変わらなかっただろうと思う。
その後の決定機を外しても、イタリアの選手たちにはどこか余裕の表情が感じられた。
そして 29分、予定通りにイアキンタのPKで追いつくと、続いて逆転弾が生まれるのは時間の問題かと思われた。
その後はシナリオ通りに、一方的にニュージーランドゴールに襲いかかるイタリア。
しかし、なぜか得点だけが生まれない。
ニュージーランドもゴール前に人数を割き、「人の壁」を作ってこの猛攻をしのいでいく。
気がつけば時間だけが過ぎていき、そしてついに同点ゴールは生まれないままタイムアップ。
ニュージーランドにとっては勝ちに等しい、イタリアにとっては負けに等しい引き分けで、この驚きのゲームは幕を閉じた。
イタリアの欠いたリスペクト
この試合をロジカルに分析するのは難しいと思う。
イタリアも4年前ほどの力は無くなっているとは言っても、下馬評では 32チーム中最下位の評価だったセミプロ軍団にまさか勝てないとは、いったい誰が予想できただろうか。
戦力だけで見れば、イタリアがニュージーランドを圧倒していたことは間違いないだろう。
ただ、僕はこの試合を見て、ボクシングの世界に伝わるというこんな言葉を思い出した。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」。
勝った時にはラッキーパンチで勝つことがあっても、負ける時には必ず負けた理由があるという意味なんだけども、イタリアにもこの格言が当てはまるのではないだろうか。
イタリアが負けたのには理由がある。
その最大の理由は、やはり「油断」ではなかったか。
もはやワールドカップに出てくるチームの中に、楽に勝てる相手は存在しないという認識が、アズーリには欠けていたように思う。
イタリアは、ニュージーランドに対するリスペクトを欠いていた。
ともかく、このドローで痛い勝ち点2を失ったイタリア代表。
そして彼らはこの後、その大きな代償を払うことになる。
[ 関連エントリー ]
- 侮れない雑草軍団、パラグアイ代表/ワールドカップ・グループF@パラグアイ代表 2-0 スロバキア代表
- デンマークの持つ「勝利の方程式」/ワールドカップ・グループE@デンマーク代表 2-1 カメルーン代表
- 「眠れる巨人」の見せた胎動/ワールドカップ・グループC@アメリカ代表 2-2 スロベニア代表
- 自らの首を締めた凡戦/ワールドカップ・グループC@イングランド代表 0-0 アルジェリア代表
- 明暗を分けた「勝ち点1」/ワールドカップ・グループD@ガーナ代表 1-1 オーストラリア代表
- ワールドカップに棲む魔物/ワールドカップ・グループD@セルビア代表 1-0 ドイツ代表
- 「漫画の世界」のスター軍団、アルゼンチン/ワールドカップ・グループB@アルゼンチン代表 4-1 韓国代表
- 混戦の中のサバイバルマッチ/ワールドカップ・グループB@ギリシャ代表 2-1 ナイジェリア代表
- フランスの見せた迷走/ワールドカップ・グループA@メキシコ代表 2-0 フランス代表
- 開催国に期待する最後の意地/ワールドカップ・グループA@南アフリカ代表 0-3 ウルグアイ代表
- 日本代表の見せた「健闘の価値」/ワールドカップ・グループE@オランダ代表 1-0 日本代表
- 繰り返された「ジャイアントキリング」/ワールドカップ・グループH@スイス代表 1-0 スペイン代表
- 細長い国の起こした「小さなサプライズ」/ワールドカップ・グループH@チリ代表 1-0 ホンジュラス代表
- 2人のコリアンが残した1ページ/ワールドカップ・グループG@ブラジル代表 2-1 北朝鮮代表
- 失われた「危機感」/ワールドカップ・グループG@ポルトガル代表 0-0 コートジボワール代表
- セミプロ集団が手にした「最高の手土産」/ワールドカップ・グループF@スロバキア代表 1-1 ニュージーランド代表
- 華麗なる「ディフェンスの競演」/ワールドカップ・グループF@イタリア代表 1-1 パラグアイ代表
- 岡田ジャパンの果たした「リベンジ」/ワールドカップ・グループE@日本代表 1-0 カメルーン代表
- オレンジ色に染まった「ワンサイドゲーム」/ワールドカップ・グループE@オランダ代表 2-0 デンマーク代表
- ドイツが歩み始めた「最強への道」/ワールドカップ・グループD@ドイツ代表 4-0 オーストラリア代表
- ガーナに吹いた「アフリカの熱風」/ワールドカップ・グループD@ガーナ代表 1-0 セルビア代表
- マイナー国対決の命運を分けた「不規則なバウンド」/ワールドカップ・グループC@スロベニア代表 1-0 アルジェリア代表
- 帰ってきた「ディエゴ師匠」と仲間たち/ワールドカップ・グループB@アルゼンチン代表 1-0 ナイジェリア代表
- アジアの誇る「ファンタスティック・フォー」/ワールドカップ@韓国代表 2-0 ギリシャ代表
- グループAの混沌/ワールドカップ@フランス代表 0-0 ウルグアイ代表
- アフリカに降臨した「サッカーの神様」/ワールドカップ@南アフリカ代表 1-1 メキシコ代表
- 開幕直前、ワールドカップ優勝国大予想/ワールドカップ展望
- グループE、日本代表はどう戦うべきか!?/ワールドカップ展望
- 代表選手に求められる「紳士の品格」/国際親善試合@日本代表 0-2 コートジボワール代表
- 「不屈のライオン」カメルーンは眠りから覚めるのか?/国際親善試合@ポルトガル代表 3-1 カメルーン代表
- 日本代表、その “理想的な敗戦” /国際親善試合@日本代表 1-2 イングランド代表
- 日本代表、日韓戦の向こうに見えるその将来/国際親善試合@日本代表 0-2 韓国代表
- 寒空に鳴るFIFAアンセム/キリンチャレンジカップ@日本代表 0-3 セルビア代表