スペイン代表が忘れかけている「謙虚さ」/ワールドカップ・グループH@スペイン代表 2-0 ホンジュラス代表

どこの世界にも「ご意見番」というのが存在する。

芸能界なら和田アキ子、野球界なら大沢親分、そしてサッカー界でいま引っ張りだこなのが、前日本代表監督のイビチャ・オシム氏である。
ちなみに僕も名著『オシムの言葉』を読んで以来、オシムさんの完全なフリークである。年をとったらあんな爺さんになりたいなと思ってたりもする。

ところでそんなご意見番のオシム氏が、今大会で酷評していたのがこの試合、スペイン対ホンジュラス戦であった。

ホンジュラスを圧倒したスペインの攻撃力

ちなみにご存知の通り、ワールドカップは1日に3〜4試合をこなすハイペースで試合が行われる。
そして僕のブログの更新ペースは、開幕3日ほどで実際の試合のペースから遅れはじめ、今となっては現実では決勝トーナメントが始まっているというのに、まだグループリーグ第2節の試合レポートを書いているというグダグダぶりだ。

それでもなるべく試合観戦だけはリアルタイムでするようにしているんだけれども、この試合の場合は、結果も全て知ってから後追いで試合を観戦することになってしまった。

だからオシムさんが、この試合でのスペインの戦いぶりに苦言を呈していたことは、試合を観る前から知っていた。
なので僕は、この試合ではスペインがスイス戦での敗戦の影響で、動きの重いプレーをしているのかな、と勝手に想像していたのだ。

しかし実際は、僕のその想像はいい意味で裏切られた。

スペインのプレーはキレキレだった。
前半 17分、ダビド・ビジャが左サイドを突破してからミドルシュートを突き刺すスーパーゴールで、試合は幕を開ける。

その後も終始ゲームを支配して、ホンジュラスに反撃の隙すら与えないスペイン。
優勝候補の呼び名にふさわしい圧倒的なボール支配率でゲームをコントロールして、後半 51分にはビジャが2点目となる追加点をゲットした。

ここまでの展開を見る限りでは、僕はオシムがどうしてこの試合を酷評していたのかがよく分からなかった。

ただその答えは、後半に明らかになる。

スペインに欠けていた「集中力」

後半も終始ホンジュラスを圧倒するスペイン。

ホンジュラスも必死の守りを見せていたけれども実力差はいかんともしがたく、3点目4点目がいつ入ってもおかしくなさそうな空気がピッチ上には蔓延していた。

しかし、スペインの3点目は入らない。

何度となく決定的チャンスの山を築きながら、スペインはそれを外しまくった。
しまいにはビジャが PKすら外してしまうお粗末ぶり。

けっきょく試合は 2-0で勝ったものの、確かにとても褒められた内容とは言えない一戦だった。

試合後にホンジュラス代表の監督は「力の差を見せつけられた」と語っていたそうである。

ホンジュラスも国内では「史上最強チーム」と呼ばれるほどの好チームだったけれども、それでもそのホンジュラス相手に無数のチャンスを作ったスペインは、比較にならないほど実力上位のチームだったと言えるだろう。

しかしである。
それでも点差はたったの2点差だったのだ。

原因はただひとつ、スペインが決定機を外しまくったことにある。

もちろんビジャやフェルナンド・トーレスを抱えるスペインが、決定力が無いわけはない。
つまりそれは、集中力の欠如と言うしかない。
オシムはこの試合のスペインを「傲慢だ」と切り捨てていた。
確かにこの試合でのスペインは、ゴール前では全く謙虚さを欠いていたと思う。
それがチャンスの数に比例しない、この微妙な点差で試合が終わってしまった最大の原因だろう。

見えてこない「優勝候補のオーラ」

「それでも勝つには勝ったんだ、文句ないだろう」。
と言ってしまえば確かにそうである。

ただ個人的に気がかりなのが、スイス戦とこのホンジュラス戦のスペインから、優勝をするチームのオーラが感じられなかったことである。

見事栄冠を手にした 2008年ユーロでのスペイン代表からは、もっとチャレンジャー精神のようなものを感じたように思う。
しかし今大会のスペインは優勝候補の筆頭にまつり上げられて、何か大事なものを失っちゃいないかい?と往年の名優、渥美清風に語りかけたいような気分にさせられるチームなのである。

これまでのワールドカップでも、スペインは期待されながらもけっきょくベスト8で敗退、という歴史を何度も繰り返してきた。
今大会はその歴史を塗り替える最大のチャンスには違いない。

しかしここまでの試合を観る限りでは、僕には今大会のスペインも、これまでのスペインと何も変わらないように映ってしまっているのも、また事実なのである。

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