世の中には、なぜか人に好かれる人というのがいる。
特別に容姿端麗なわけでも、ずば抜けて面白いことを言うわけでもないのだけれど、どことなく憎めなくて、自然と人に可愛がられるような人物。
サッカー選手で言えば、僕の場合は長友佑都なんかがそのイメージになるんだけれども、これをワールドカップに出場しているチームに置き換えると、今大会ではウルグアイとメキシコが当てはまる。
どちらもメッシやクリスティアーノ・ロナウドほどのスーパースターがいるわけでもなければ、スペインのような華麗なパスワークがあるわけでもない。
それでも、なぜか好感を抱いてしまうチームである。
そんな両チームの対戦となったこの試合は、その好感度をそのまま反映させたような、密度の濃い好ゲームとなった。
アグレッシブに攻め合った好ゲーム
この試合はもしかしたら「消化試合」になっていたかもしれないゲームだった。
そして実際、限りなく消化試合に近かった。
ここまで2試合で両チームが挙げた勝ち点はともに4。
もう一会場でゲームを行っている南アフリカとフランスがともに勝ち点1。
得失点差でも優位に立っている両チームは、この試合で引き分ければ文句なしに仲良く決勝トーナメント進出が決まる。
仮に負けても大敗するか、南アかフランスが大勝しない限りは2位以内の座が安泰という、圧倒的に優位な立場にあったのである。
こういう場合、両チームはあまりリスクを冒さずに引き分けを狙いにいく場合が多い。
むしろ、それが普通だと言ってもいい。
僕もこの試合を観る前は、そんな「無気力試合」を 90分間見せられることを覚悟していて、退屈な試合なら容赦なく早送りしてやろうと妙な意気込みを持っていたのである。
しかし蓋を開けてみれば、試合はそんな想像をめぐらしていた自分が恥ずかしく感じられるほどの、白熱の好ゲームとなった。
ゲームは立ち上がりから、全く予想に反するものだった。
両者とも引き分けなどこれっぽっちも狙っていないのではないかと言うようなアグレッシブさで、次々と相手ゴールに襲いかかる展開。
もともと実力派のチーム同士だけに、勝負はどちらに傾くでもなく、両者がオープンな打ち合いの中で同じくらいのチャンスを作りあうような、非常に見ごたえのある激しいゲームになった。
そんな中、勝負が動いたのは前半終了間際の 43分。
中盤でボールを奪ったディエゴ・フォルランが起点となり、ウルグアイがショートカウンターを仕掛ける。
そこから右サイドに開いたエディンソン・カバーニがダイレクトでクロスを上げると、これをゴール前でルイス・スアレスが合わせてゴールゲット。
ウルグアイが先制して前半を折り返す展開となった。
後半になっても前半同様に、両者一歩も引かない濃密な攻防が繰り広げられる。
得点こそ生まれなかったけれども、非常に見ごたえのある後半戦を終了し、この対決はけっきょくウルグアイが 1-0で勝利。
南アがフランスに勝ったものの得失点差を詰めることはできず、グループAは1位ウルグアイ、2位メキシコという形で最終節を終えたのである。
両チームの見せた「青春サッカー」
それにしても驚かされたのが、両チームが見せた全く妥協のない戦いぶりだった。
セコイ引き分け狙いなどに走らず、真っ向勝負で実力を試しあった両チーム。
その姿は、いやが上にも好感を抱いてしまう類のものだった。
僕はこの両チームの戦う姿に、一つの既視感を覚えた。
そう、これはまるで高校選手権のようではないか。
スネ毛も生えそろったばかりのピカピカの 10代が、汗でユニフォームを濡らし、スライディングでパンツを汚しながら全力で走り続ける、嗚呼…高校選手権。
そんな日本の冬の風物詩と同じような、爽やか・キラキラ・真っ直ぐなサッカーを、このワールドカップの舞台でウルグアイとメキシコはやってのけたのである。
僕は確かに、ルステンブルク:ロイヤル・バフォケン・スタジアムのスタンドの向こうに、西が丘サッカー場を囲む板橋区の街並みが見えたような気がした。
ジャパニーズJKたちをキャーキャー言わせる高校球児たちの青春オーラに、フォルランの大人の色香やラファエル・マルケスのセクシーすぎて目に見えてきそうな体臭(たぶん)が加われば、これが魅力的にならないはずがない。
中南米の中堅チームたちが見せた、華麗でなくても魅力あふれるサッカー。
南アフリカを応援していた僕からしたら残念な結果に終わったグループAではあったけど、勝ち上がった両チームは間違いなく、16強に値する好チームであった。
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